喉頭がんのため声帯の摘出手術を受けた音楽プロデューサーつんく♂(46)が9日、東京・目白の学習院大学百周年記念会館で行われた歌手クミコ(61)の「日本子守唄協会15周年記念コンサート」にサプライズゲストとして登場した。つんく♂はクミコの最新シングルの子守歌「うまれてきてくれて ありがとう」の作曲を担当した縁で、クミコと作詞家湯川れい子氏のラブコールに応えた。

 つんく♂が公の場に姿を見せるのは、7月3日のプロ野球楽天-日本ハム戦(東京ドーム)の始球式以来。黒いスーツにハット、首にはストールを巻いた姿でステージに上がった。思いの丈をつづった手紙をジャケットの胸ポケットから出すと、クミコが「世の中もどんどん変動していく中で、今この世の中が求めている子守歌がきっとあるんだと思うんです」と代読。つんく♂は、手にスマートフォンを持ちながら、「(ステージの)後ろの花がきれい」などと、コンサートの感想を文字で伝えた。

 最後はクミコが「うまれてきてくれて-」を歌う姿を、湯川氏と並んで聞き入っていた。首でリズムを取りながら口を動かし、声にならない声で懸命に歌唱。感極まって目頭を押さえる場面もあり、湯川のもらい泣きを誘った。つんく♂から握手で激励されたクミコは「私には子供がいないけれど、この曲を大事に育てていきたい」と誓っていた。

 公演前にはクミコ、同曲の作詞をした湯川氏が取材に応じた。クミコはレコーディング前の打ち合わせで、つんく♂に「自分の歌い方に癖があって、洗い出してくれた。つんく♂さんに『そこはそうじゃない。このようにしていただきたい』と言われました。1年生のときのような気持ちになった」と、ダメ出しされた話を明かした。湯川氏も「歌唱指導の日は、もはや(パソコンなどの)ツールは必要なかった。身ぶり手ぶりと笑顔だけ。声が聞こえるような気がした」と振り返っていた。

 つんく♂は、4月に母校近畿大学の入学式で、声帯の摘出手術を受けたことを公表していた。