渡辺

 淳一氏(わたなべ・じゅんいち=作家)4月30日午後11時42分、前立腺がんのため、東京都内の自宅で死去、80歳。北海道出身。葬儀・告別式は親族で行った。喪主は妻敏子(としこ)さん。

 札幌医大在学中から小説を執筆し、札幌医大の講師を経て作家に。同大で起きた心臓移植事件を題材にした「小説心臓移植」を発表して話題となった。

 70年「光と影」で直木賞。80年には野口英世の人生を描いた「遠き落日」と「長崎ロシア遊女館」で吉川英治文学賞を受賞した。80年代からは「化粧」「ひとひらの雪」などの恋愛小説を立て続けに刊行。中年男女の不倫をテーマにした「失楽園」は大胆な性描写で話題となり、250万部を超す大ベストセラーに。「失楽園」は流行語大賞に選ばれた。

 松井須磨子をモデルにした「女優」などの伝記のほか、恋愛や生き方を指南するエッセーも人気で、「鈍感力」は流行語になった。「失楽園」「愛の流刑地」など映画化された作品は多数。海外での翻訳出版も多く、中国では絶大な人気を誇った。

 2003年に紫綬褒章と菊池寛賞。直木賞や吉川英治文学賞などの選考委員を務めた。札幌市に渡辺淳一文学館がある。