著作権譲渡をめぐり、5億円の詐欺罪に問われた音楽プロデューサー小室哲哉被告(50)の第3回公判が23日、大阪地裁(杉田宗久裁判長)で開かれ、検察側は「著名な音楽家という地位を最大限利用したずる賢く悪質な犯行」として懲役5年を求刑した。弁護側が執行猶予付きの判決を求めて結審し、判決は5月11日に言い渡される。求刑に先立ち、小室被告は、男性にあてた手紙を朗読。「生まれ変わるつもりで生きていきたい。音楽を通じて社会貢献したい」と謝罪した。

 被害者の兵庫県芦屋市の投資家男性は、事件当時の印象を問われると「捨て猫のようにやつれていた。救ってあげたかった」と証言。小室被告は下を向き、涙をぬぐった。しかし同情の言葉は冒頭だけだった。「人としての優しさや友情を裏切られた。人間として最も大事なやさしさを失ってしまった」と断罪した。

 さらに被害男性はインターネット掲示板で個人攻撃されたことを涙ながらに訴えた。「エイベックス・グループ・ホールディングスの関連会社の取締役がブログで私のことを『あやしい人物』であると書いた。これは反省ではなく、私への反撃」と不信感をあらわにし、処罰感情の強さを見せた。

 最後に裁判長に促された小室被告は証言台の男性に歩み寄り「大変、ご迷惑をおかけしました」と異例の直接謝罪した。しかし男性の口から「許す」という言葉は出なかった。

 小室被告は起訴状の内容を認め、被害弁済もした。被告人質問では「一から出直して純粋な音楽家に戻りたい」と訴えたが、不安も口にした。検察側から判決後について問われると「(刑務所での服役も)当然考えている。映画やドラマで見たり…。大阪拘置所での雰囲気やそのときの気分を毎晩思い出す」。実刑か執行猶予付き判決か、注目される。

 [2009年4月24日6時51分

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