初めて書き下ろした小説「KAGEROU」が第5回ポプラ社小説大賞を受賞した俳優水嶋ヒロ(26)が1日、都内で行われた受賞発表会に出席した。今年9月に所属事務所を退社、作家として鮮烈なデビューを飾った。主演映画の初日舞台あいさつ以来、約2カ月ぶりの公の場で、作品について語り、退社に至った一連の騒動を謝罪した。また、同賞の賞金2000万円を辞退したことも明らかにした。

 水嶋は黒のジャケットとパンツ姿で登場した。詰め掛けた約80人の報道陣のフラッシュを浴びた水嶋は緊張気味に「大切な1歩目となるこの作品で大賞をいただき、まだ身震いをしています。また、名前(芸名)を伏せて受賞したので、純粋に作品が評価されてうれしいです」とあいさつした。

 受賞作(発刊時期未定)は、自殺志願者と止めようとする男の物語。ポプラ社によると、水嶋は「斎藤智」のペンネームで応募し、職業欄は「空白」だったという。400字詰め原稿用紙388枚を使い、同社には6月23日に郵送で届いた。1285通の応募の中から最終選考では、社内選考員13人のうち8割が受賞に賛同し大賞が決まったという。碇耕一事務局長は「粗削りの部分もあったが、それを勝るパワーがあった」と評した。

 また、所属事務所を退社し作家に転身した経緯について「決してクビではなく、自ら志願した退社で、前事務所と僕ら(妻で歌手の絢香)との関係は良好です。ネガティブなことは一切なく、育ててくれたことを感謝しています。話し合いをして、俳優中心でないライフスタイルを選んだ自分を応援してくれた」と力を込めて説明した。

 今後の作家活動に関しては「命という最も大切なテーマを軸に活動していきたい。少しでも社会に貢献したい」と語った。

 同発表会終了後、報道陣に、水嶋が受賞賞金2000万円を辞退することが発表された。辞退の理由について所属事務所A

 stAtionは「同賞が新しい才能を支援し、ともに育つための文学賞」との意味を持つことから、水嶋本人が「さらに多くの作品が生まれてほしい」と願ったためと説明した。同賞金は、読み聞かせのイベントなどに有効活用させるという。また同社は、今回を持って同大賞に区切りを付け、来年度からは「小説新人賞」(賞金200万円)を設ける。

 水嶋の受賞が報じられた1日、同社には書店からの問い合わせが多数殺到したという。作家水嶋の今後に注目だ。

 [2010年11月2日8時28分

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