涙が止まらなかった。第53回日本レコード大賞が30日、東京・新国立劇場で発表され、AKB48の大ヒット曲「フライングゲット」が大賞を受賞した。メンバーは発表直後に泣き崩れ、受賞スピーチでも言葉を詰まらせた。東京・秋葉原から誕生したアイドルグループは、結成から6年で日本音楽史にその名を残すメジャーグループに成長した。号泣後のステージでは笑顔を取り戻し、大賞の名にふさわしい全力パフォーマンスで歌いきった。最優秀新人賞はFairies(フェアリーズ)に決まった。

 受賞決定のアナウンスの声を聞き、メンバー21人は客席で泣き崩れた。両手で顔を覆って泣き顔を隠した。信じられないという表情を見せた。メンバーは、拍手と歓声に後押しされながらステージに向かった。高橋みなみと前田敦子は列の先頭に立ち、抱き合いながら登壇。大島優子は涙をこぼし、表情をくしゃくしゃにしながらステージに上がった。

 受賞スピーチは言葉にならなかった。前田は声がかすれて「え~っ」としか言葉が出ない。気持ちを落ち着かせ、「すべての人に感謝します」とうわずった声で気持ちを表現した。高橋は昨年流した悔し涙を思い出した。昨年は大賞本命とも言われたが、受賞を逃した。「去年、この日から1年間頑張ってこられて良かった」。大島は目を潤ませながら、「(受賞曲は)選抜総選挙で歌った曲。ファンの曲と言っても過言ではない」と声を振り絞った。

 受賞記念のステージ。売り上げ150万枚以上の大ヒットを記録した「フライングゲット」を歌った。涙顔は笑顔に変わっていた。大島は「ほかのアーティストと比べたら、私たちは劣っているかも知れない。でも自分たちのできることは笑顔でみんなを元気にすること」と話した。言葉通りに明るいAKB48のパフォーマンスを全国に届けた。

 今年は3連覇中のEXILEが賞レースを辞退して不参加だったとはいえ、大賞の候補となる優秀作品賞には、KARA、東方神起、氷川きよし、ファンキー・モンキー・ベイビーズ、いきものがかりなど豪華な顔ぶれが並んだ。昨年の悔しさをバネに、大賞受賞を目標に活動してきた。努力が結実した。

 今年の音楽界を支えたのは間違いなくAKB48。セールス面でほかのアーティストを圧倒した上、話題性あるイベントでファン層を大きく広げた。その活躍ぶりは経済効果まで注目される社会現象となった。

 原点は東京・秋葉原。結成当時は、熱心なファン向けのアイドルグループとみられていた。メジャーの象徴ともいえるレコード大賞は、地道な努力が実った勲章だ。総合プロデューサーを務める秋元康氏も目を潤ませた。メンバーから次々と「感謝の気持ちを伝えたい」と言われると、「夢はかなうんだということを彼女たちが証明してくれた」と声を震わせた。記録ずくめの1年を象徴する初受賞。さらなる飛躍を予感させた。

 ◆AKB48

 「会いに行けるアイドル」のコンセプトで05年に発足。メンバー48人と東京・秋葉原を示すアキバ(AKIBA)からグループ名を決定。「A」「K」「B」「4」の4チームで形成され、ほかに研究生がいる。最大の特徴は、秋葉原に専用劇場を持つこと。妹分として名古屋のSKE48、大阪のNMB48、博多のHKT48、インドネシア・ジャカルタのJKT48がいる。シングル曲のセンターポジションを競う選抜総選挙やじゃんけん大会などのイベントが話題になった。