高倉健さん(享年83)の訃報が伝わった18日、映画界に激震が走った。映画「動乱」などで共演し、恩人と慕う吉永小百合(69)は感謝の思いを込めたコメントを発表した。

 突然の訃報に吉永もショックを隠せなかった。関係者を通じ、「お知らせに信じられない思いでおります。86年に中国への旅をご一緒して以来1度もお目に掛かっていませんでした。映画の世界に生きることの素晴らしさを教えていただいた方です。本当にありがとうございました。感謝の思いでいっぱいです」とコメントするにとどまった。

 ともに映画界を代表する存在だが、実は共演作は80年「動乱」、82年「海峡」(ともに森谷司郎監督)の2本のみしかない。それでも高倉さんは、吉永の女優人生に大きな影響を与えたという。しっくりと来る役に恵まれず、吉永が映画女優として限界を感じていた時期にも重なった。

 「動乱」では、北海道サロベツ原野のロケで雪原の中に立ち平然と昼食をとる姿に衝撃を受けた。

 今年10月の本紙の取材でも「私は寒くてロケバスで食事したんですけど、高倉さんは中に入らない。びっくりしました。とにかく心で演じる人でした。映画をもう1回やってみようと思いました」。さらに「巡り合えなかったら、何となくゲストで映画に出て、テレビの連続ものをやって、となったかもしれません」と話している。

 高倉さんとともに、撮影の1年間は他の仕事をいっさいせず、この作品に打ち込んだ。映画作りに全てをささげる「高倉流」はその後、映画にこだわり続けた吉永の女優人生に大きな影響を与えている。【相原斎】