EXILEのリーダーHIRO(45)が、映画界に進出する。28日、初めてプロデュースする映画「たたら侍」(錦織良成監督、16年公開予定)の発表会見を島根・出雲市の出雲大社で開催。成功祈願祭も行い、「歴史に残るような作品にする」と誓った。音楽シーンを彩ってきた45歳が、新境地を切り開く。

 HIROが、念願の映画製作を手掛ける。それも、時代劇での挑戦だ。

 「たたら侍」は、戦国時代の島根を舞台にしている。奥出雲に6世紀から伝わる世界一の製鉄技術「たたら吹き」を通じて、鉄作りに励む父と、1度は反発した息子が郷土愛と鉄作りに目覚める物語になる。

 20代のころから、映画好きだった。「多くのジャンルのさまざまな作品を見ては、刺激やアイデアをライブなどに生かしてきました」。昨年限りでパフォーマーを引退し、プロデュースに専念したことで機が熟した形だ。

 出雲との出会いは、昨年1月公開の映画「渾身」を手掛けた錦織監督作品に、劇団EXILEの青柳翔(29)が主演したことだった。出雲出身の錦織監督と親交を深めていくうちに、世界一の高純度の鉄「玉鋼(たまはがね)」を作る技術に魅了された。今年1月、神事なので年に1度しか見学できない「たたら吹き」を初めて間近に見た。「神秘的で、ここには命をかけた伝統があった。自分らはいつも『世界を目指す』と言っていたが、新たなエンターテインメントの映画に挑戦したいとあらためて思いました」。

 一方で、日本のエンターテインメントや物作りの精神などの魅力が、世界に伝わっていない現状を打破したい思いもある。「日本で生まれ育って今がある。日本の良さを世界に伝える義務もあるだろうし、海外に発信することは、恩返しにもなる」。当然、興行的なヒットを目指しているが、それ以上に「歴史に残るような後世に残る作品。世界中の人たちの心に響く映画にしたい」と誓った。

 同作は来月に出雲でクランクイン。青柳が主演し、EXILEのAKIRA(33)、映画初出演の小林直己(29)らも出演。EXILE一族が、HIROをバックアップする。【松本久】

 ◆「たたら侍」

 島根を舞台にした戦国時代の物語。名刀作りに欠かせない鉄「玉鋼」を生み出す製鉄技術「たたら吹き」の職人たちがいた。一心に仕事に励むだけの父に反発した息子が、武士になろうと親元を飛び出す。だが、やがて故郷へ戻り、匠(たくみ)の技で玉鋼を作り出す父の姿こそ、実は真の武士の姿だと気付く。日本が誇る物作りの技術だけでなく、武士道に通じる精神世界も描く。