V6岡田准一(34)が初の主演男優賞に輝いた。第27回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が3日、決定した。岡田は映画「永遠の0」「蜩ノ記」で圧倒的な存在感を示した。石原裕次郎賞には「るろうに剣心」が選ばれた。授賞式は、28日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。「るろうに剣心」には裕次郎夫人の石原まき子さんから賞金300万円が贈られる。

 今年の顔といえる大活躍の1年だった。皮切りは「永遠の0」の大ヒットだ。興行収入は87億円を超え、歴代の実写日本映画で6位となった。世代、性別を問わず幅広い観客が映画館に足を運んだ。「若い人よりもおじさんたち、サラリーマンの方々に『良かった』と、すごく声を掛けていただいて。体感的には、女性よりも声を掛けてもらうことが多くなりました」。

 撮影準備に約2カ月間を費やした。「どう心を作って演じるか。V6のにおいを消さないといけない。役作りには時間がかかります」。軍事訓練を受け、特攻隊員にも話を聞いた。夜中に跳び起きて、気になることを調べたこともあった。特攻隊員として心が疲弊していく場面の撮影期間は、食事がのどを通らなくなった。眠りも浅かった。恰幅(かっぷく)をよくしたNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の収録時に比べると、体重は10キロもやせていた。

 真摯(しんし)に役と向き合う姿勢に、スタッフや共演者も絶大な信頼を寄せる。「蜩ノ記」では居合に初挑戦した。07年主演ドラマ「SP」などのために、フィリピン武術をはじめ数々の武術を習得。師範資格を持つほどのセンスの良さを見込まれ、殺陣などで使う刀は、軽く安全な竹みつではなく、重いジュラルミン製を渡された。

 撮影後は共演した役所広司と一緒に風呂に入り、質問攻めにした。「時代劇を演じる上での心得や、名優の言葉を拾うためにね。聞かないと教えてもらえないですから」。出番がない時は、カメラの後ろでその演技を見つめた。「尊敬して、学ぶ。若い子たちにつなげるものはどういうものなのか。上の人たちの考えていることを知りたい、というのもあるんです」。

 自宅の棚にDVDなどが1000本以上並ぶ。「昔はフランス映画がいいとか、古い映画ばかり見ていた時期もありますが、今は何でも。『アナ雪』も歌いながら見ますよ」。何度も見る作品もある。「『グラディエーター』は1年に1回、必ず見ます。ああいう作品をやりたいと、20代前半から思っています」。

 06年の石原裕次郎新人賞に続く、主演男優賞受賞。「新人賞をいただき、それが限界と思っていました。正直認めてほしかったんだろうな。今回は報われると思ったんです。僕は関西人なので、いただけるものはいただきます!」。ちゃめっ気たっぷりに喜んだ。

 アイドルとしてCDデビューして20年。「性格も地味だしキラキラしたところに出ていくことに、まだ違和感があって」。控えめな性格は変わらないが、変わったものもある。「夢は実写映画でジブリ作品以上の興行収入を記録することです。きちんと心が表現できれば、上の世代にも下の世代にも通じると思うんです」。記録と記憶で日本映画史に残るスターへ。主演作の大ヒットから夢が広がっている。【近藤由美子】

 ◆岡田准一(おかだ・じゅんいち)1980年(昭55)11月18日、大阪府生まれ。V6として95年「MUSIC

 FOR

 THE

 PEOPLE」でCDデビュー。03年「COSMIC

 RESCUE」で映画デビュー。同年「木更津キャッツアイ

 日本シリーズ」で映画初主演。映画は「東京タワー」「フライ、ダディ、フライ」「陰日向に咲く」「SP」「天地明察」「図書館戦争」など。06年「花よりもなほ」で日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞。今年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」に主演。169センチ。血液型B。

 ▼永遠の0

 祖母の葬儀に出た佐伯健太郎(三浦春馬)は、戦争で亡くなった血のつながった祖父宮部久蔵の存在を知る。祖父を調べるため、戦友に話を聞くが「海軍一の臆病者」との人物評ばかり。戦争中の宮部(岡田准一)は妻松乃(井上真央)と娘清子のために「必ず帰る」と誓い、生還のためゼロ戦の操縦技術を磨いた。しかし宮部は終戦間際、特攻を志願する。山崎貴監督。

 ▼蜩ノ記

 原作は葉室麟氏の直木賞受賞作。刃傷沙汰を起こした檀野(岡田准一)は罪滅ぼしに秋谷(役所広司)を3年間監視するよう命じられる。秋谷は側室と不義密通をして小姓を切り捨てる事件を起こしたとして、罰として家譜編さんと切腹を言い渡されていた。檀野は切腹までの3年間、心乱さず淡々と過ごす秋谷に感銘を受け事件の真相を探る。小泉堯史監督。

 ▼主演男優賞・選考経過

 岡田准一が、浅野忠信との決選投票を制した。「時代に合った人物になりきれる希有(けう)な俳優」(須永智美氏)「特攻していく顔は人間ではないよう。役者のすごみを感じた」(石飛徳樹氏)と、岡田を推す声に説得力が高かった。1回目の投票では岡田がわずかに過半数に足りず、2人の決選投票で競り勝った。