生まれ変わったら何になるか-。萩野公介(21=東洋大)は最強の海の王者シャチ、瀬戸大也(22=JSS毛呂山)は誰からも愛されるイルカだという。萩野と瀬戸は、6日に行われる競泳男子400メートル個人メドレーで金メダルを争う。小学生時代から戦い続けてきた同学年の2人は、得意種目から性格まで面白いくらいに対照的。注目のライバル対決を目前に、異なる2人の姿を紹介する。<2人の歩み>

 萩野=対記録

 小学校時代は全戦全勝。中学時代は中学記録を計29回塗り替えた。現在も学童(小学生)記録2、中学記録10、高校記録5、日本記録4と計21個の国内記録を保持。「相手はタイム。勝ってもタイムが悪いと納得できなかった」。

 瀬戸=対萩野

 小学生時代に全敗した萩野の背中を追い続けた。小学3年の初対戦は25メートル以上の大差をつけられ、闘争心に火。「すごいと感じたが、いつか絶対に勝つ」。中学2年で初勝利すると、その後は勝ち負けの関係に持ち込む。<泳ぎの特長>

 萩野=効率

 得意種目は背泳ぎ、自由形。「水中姿勢が真っすぐで水の抵抗が少なく、滑るような泳ぎ」(日本水連・岩原競泳委員)

 瀬戸=パワー

 得意種目はバタフライ、平泳ぎ。「水を捉える感覚がうまいから推進力がある」(同)

 岩原氏は「萩野がスケート靴なら瀬戸はスパイクのような感じ」と説明した。<考え方>

 萩野=ネガティブ

 レース前に負ける可能性をしらみつぶしに探すことも。本人は「超ネガティブですから」。不安が弱気を呼び込み、本来の力を出せないことも少なくない。

 瀬戸=ポジティブ

 何があっても前向き。昨年6月の欧州GPでは練習道具を盗まれたが、新品を購入すると「盗まれて良かった」。リオ五輪決勝は異例の午後10時となるが「夜の方が燃える。野性の本能を解放させる」と息巻く。<教育方針>

 萩野=完璧主義

 子供の頃の習い事は水泳以外にもピアノ、英語、塾。自宅では母貴子さんが教えていたお茶の稽古も。貴子さんは「自分は完璧主義。例えばテストで95点を取っても、なぜ5点を取れなかったかを考えさせた」。日々の練習を真面目に取り組み、ストイックに記録を求める。

 瀬戸=自由奔放

 母一美さんは「反抗期はない。伸び伸びと好きなことをやらせてきた。反抗する理由がない」と笑う。父幹也さんは「俺は天才バカボンのパパでいい」と公言する。どんなに悪い結果でも、決め言葉「これでいいのだ」と息子の失敗を受け入れた。失敗を恐れず、ポジティブな思考回路が植え付けられた。<世界大会>

 萩野=金なし

 日本選手権は12年から5連覇で日本記録(4分7秒61)を持つが、世界大会では瀬戸に敗れ続ける。昨年の世界選手権は右肘骨折で欠場。

 瀬戸=4連勝

 12、14年世界短水路(25メートル)と13年、15年世界選手権を連覇。大舞台で強さを発揮する。

 五輪を前にタイムを求めてきた萩野は、平井コーチの教えもあって今は打倒瀬戸に集中。一方、打倒萩野が水泳人生だった瀬戸は、入れ込みすぎを抑えるためタイムを意識する。最後の最後まで対照的な同学年の2人。どちらに勝利の女神がほほ笑むか。【田口潤】