J1、J2に続いて、3月11日にJ3が開幕を迎える。同リーグ参入4年目となる藤枝MYFCが今季、大胆な発想で集客アップを狙っている。週末のリーグ戦に向けて「かかってこい」と題し、クラブ公式サイトで戦術や予想スタメンなどを公開。第1弾は、開幕アウェー福島ユナイテッドFC戦の前日10日にアップされる予定となっている。

 勝敗を大きく左右する戦術の公開は、ノーガードで戦うようなもので、そのリスクは高い。私が静岡支局で昨年まで担当していた高校サッカーでも、相手チームの「分析」を行うことは主流だった。時代にも逆行している手法だが、大石監督は「J3は見て頂いてなんぼ。少しでもサッカーの楽しさを味わっていただきたいですね」と話す。

 ふと、人気アイドルグループAKB48が頭に浮かんだ。同グループは「会いに行けるアイドル」をコンセプトに、専用劇場でほぼ毎日公演。遠い存在であったアイドルではなく、身近に感じられる、成長していく過程をファンに見てもらうことで人気が爆発。今では国民的アイドルになった。

 「会いに行ける」とは違うが、「身近」という部分では類似点は多い。サッカーに詳しくないファンにとっては、試合を楽しむポイントが理解しやすい。サポーターにとっても、戦術を“共有”することで「共に戦う」という意識がより芽生えるように思う。

 昨季チームは過去最高の7位を記録し、観客平均数は前年比の1・5倍に伸びた。それでも、平均1500人。今後、J2昇格を目指すためにはJ2クラブライセンスの取得が必要で、条件の1つ「年間平均入場者数3000人以上」も満たしていかなければならない。クラブ成長のために投じた新たな一手が、どのような変化をもたらすのか注目していきたい。

 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。昨年までは高校サッカーを取材し、今年から磐田担当。