鹿児島城西(鹿児島)の超高校級FW大迫勇也(3年)に「イライラ禁止令」が出た。全国高校サッカー選手権決勝は、鹿児島城西と広島皆実(広島)がともに初優勝をかけて12日対戦する。両校は11日、東京・駒沢陸上競技場で練習を行った。大迫勇は小久保悟監督(41)から、今大会5試合1失点の相手の堅守を破るため、「冷静なプレー」を指示された。

 初優勝、そして前人未到の1大会2ケタ得点へ向け、「怪物」がクールなプレーに徹する。軽い調整練習を行ったこの日、大迫勇に対し、小久保監督は「相手に対してムキにならないことが大事。チームのために点を取れば勝利がついてくるから」と指令を出した。

 苦い記憶があるからこその忠告だった。昨年12月の広島皆実との練習試合で、鹿児島城西は2-3で逆転負け。大迫勇と野村が得点を奪ったが、全国屈指の守備力を誇る広島皆実の前に大苦戦を強いられた。現チームで対戦した残る2試合(1試合は前半のみ)も、ともに0-1で敗戦。小久保監督は「相手の守備に大迫勇はムキになってしまっていた」と振り返った。

 冷静な判断力、得点能力に加えてアシスト能力も高いことが大迫勇の持ち味だが、負けず嫌いの性格から、2年までは1人で突破する姿が散見されていた。今でこそ「大人のプレー」を身につけたものの、相手の堅い守りにあい、パスがこない状況などに陥ると、冷静さを欠くことがあるという。

 この日の練習に訪れた、鹿児島城西を指導する瀬戸俊一トレーナー(32)は「精神面にムラが出ると、特徴の動きの柔軟性が失われる。精神面も大事です」と指摘。1大会10点目となるゴールを奪えば、必然的に優勝に近づくだけに、大迫勇は「立ち上がりをうまく入って自分が点を取れれば、いい形になると思う」と言い切った。悲願の日本一を勝ち取るための鍵は、「冷静さ」にあると言えそうだ。【菅家大輔】