なでしこジャパン(FIFAランク4位)のエースが、2連覇に挑む女子W杯カナダ大会(6月6日開幕)へ弾みをつけた。日本は後半7分にFW大儀見優季(27=ウォルフスブルク)が決勝点を挙げ、過去7戦全敗だったイタリア(同13位)を下した。24日のニュージーランド(同17位)戦に続く勝利で、W杯前最後の試合を締めた。6月1日に決戦の地カナダへ出発し、8日(日本時間9日)に1次リーグC組初戦でスイスと対戦する。

 FW大儀見のエースらしいゴールだった。0-0の後半7分、左サイドバックに起用されたMF宇津木の低いクロスに対し、相手DFを背中でブロックしながら右足を伸ばし、アウトサイドで決めた。「自分の得意な形。クロスからの得点はチームの狙い通り」。相手との駆け引き。一瞬の速さ。泥臭くてもゴールを狙う姿勢。欧州での成長が凝縮された決勝弾だった。

 W杯前の最終戦のテーマは流れの中での得点だった。W杯前哨戦と位置付けられる3月のアルガルベ杯で日本は9位。W杯を制した最大武器のパスワークが研究され、封じられることを再認識させられた。4日前のニュージーランド戦でもCKからの澤の1点のみ。そんな中での得点で「個人としてではなく、チームとしての積み重ねができた。やっと1つ形ができた」と自信を得た。澤は「本当に頼もしいストライカー。流れの中で欲しい時に決めるのはさすが」と称賛した。

 4年前の記憶は、悔しさしか残っていない。「あの時は自分が自分がだった」。自分本位なプレーで孤立し、準々決勝のドイツ戦で途中交代。準決勝スウェーデン戦からは先発を外された。歓喜の中で、悔し涙を流した。気持ちを察した宮間は無言で寄り添ってくれた。仲間も優しく支えてくれた。こんな自分ではいけない-。「今は頼れる味方がいるから頑張れます。仲間を信じれば自然に結果が出るのは分かっている」。大きな挫折が、精神的な成長を生んだ。

 12年ロンドン五輪では、苦しい場面でゴールを重ね、信頼を得た。だが、恩返しのゴールはW杯でこそ。「やるからには2連覇。簡単なことではないのは分かっている。カナダではチーム一丸となって楽しみたい」。4年前と違う気持ちでピッチに立つ準備は出来ている。この日のゴールで証明した。【鎌田直秀】

 ◆大儀見優季(おおぎみ・ゆうき)1987年(昭62)7月15日、神奈川・厚木市生まれ。日テレ・メニーナ-日テレ-ポツダム(独)-チェルシー(英)-ウォルフスブルク(独)。04年アテネ五輪予選で代表デビュー。08年北京五輪4位、11年W杯優勝、12年ロンドン五輪銀。国際Aマッチ出場117試合、53得点。今回は妹亜紗乃とともにW杯代表。11年7月に結婚。168センチ、58キロ。