日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)が妥協を許さぬ「超管理サッカー」で、W杯行きのキップを勝ち取る。25日に東京・本郷のJFAハウスで、9月に行われる18年ロシアW杯アジア最終予選2試合のメンバーを発表。席上で鹿島FW金崎夢生(27)について、鹿島の石井正忠監督とリーグ戦の最中に衝突したことを理由に選外にしたと異例の説明。リオデジャネイロ五輪で銀メダルの陸上男子400メートルリレー日本代表も引き合いに、難敵ぞろいの予選突破には鉄の結束と万全の準備が必要だと説いた。

 居並ぶ報道陣が息をのんだ。FWの人選について説明していたハリルホジッチ監督は「1つ言いたいのは金崎」と付け加えた。

 「日本代表の選手がああいう態度を取ってはいけない。それが理由で外した。チームの基準として、日本の全選手に言いたい。こういう行動を取ると日本代表には入れません。以上です」

 金崎は20日の湘南戦で交代を命じられると、石井監督の握手を拒むなどの反抗的態度を取った。ハリルホジッチ監督は「この態度は受け入れがたい。(再招集など)先のことは考えていない」と厳しく断じた。

 ここまで断固たる態度を取るのは「W杯最終予選を突破する」という使命感ゆえだ。五輪で銀メダルを獲得した陸上400メートルリレー日本代表を引き合いに、目指すべき境地を語った。

 「米国は個々では日本より速い。でも全員でかかったら、日本の方が強かった。彼らは自信を持ってレースに臨んだ。うちのチームにも植え付けたい。組織になれば勝てる。自信を持ってくれ、と」

 一糸乱れぬ鉄の結束。そして「世界最高のバトンリレー技術」という万全の準備。それらがあったからこそ、陸上大国の米国に勝てた。サッカーも同じ。和を乱す選手がいては、組織としての強さは出ない。同監督は「1年半、こんにちはしか言わない選手もいる。変わってほしい」と協調性の大事さを説く。

 「準備」も万全を期す。会見中「予測が必要」と10回以上繰り返し、リスク管理の必要性を強調。けが明けの武藤、アーセナルからのレンタル先が確定しない浅野など、コンディションに不安がある選手が多いFWは7人も招集した。選手には、3カ月かけてチームコンセプトを記した「日本代表のアイデンティティー」という約30ページの書類を配布する。さらに「フランスの最新の技術を導入した」という、各選手の筋力バランス、疲労回復力などのデータをまとめた「アイデンティティーカード」も個別に配る。

 戦術理解を進め、けがの予防、肉体強化も怠らせない。自らも大事な初戦の相手、UAEの試合VTRを10~20試合チェック。「やり方は完全に把握している」と対策を徹底する。

 「同組にアジア杯4強が3カ国いる。UAEには負けているし、彼らは1カ月半も事前合宿をしている。『何とかなるだろう』ではリスクが生じる。最終予選を突破するには、日本全体が勇気を持って前に進まないと。難しさはあるが、勝ちに行く」。フランス語で「勝利」を意味する「ガニエ」という単語を、語気を強めて発した。【塩畑大輔】

 ◆金崎の問題行動 20日の鹿島-湘南戦で、鹿島FW金崎が途中交代に不満を爆発させた。0-0の後半25分、MFファブリシオと代わってベンチに下がる際、石井監督の差し出した手をあからさまに拒み、激高するような態度を見せてスタッフに抑えられた。問題行動に石井監督は「監督の立場からすれば、あれは選手がやってはいけない行為。冷静になったら、しっかり話をしたい」と話した。試合翌日、金崎は石井監督に謝罪を入れて和解した。