国際親善試合オマーン戦(11日、カシマ)と、W杯アジア最終予選サウジアラビア戦(15日、埼玉)に向けたサッカー日本代表合宿3日目が8日、茨城県内で行われた。

 サッカー日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)が、25人全員が初めてそろったピッチ内でカミナリを落とした。ゴール前での4対4の練習で、攻守の徹底が不完全だったFW原口や大迫に対して激高。15日のサウジアラビア戦(埼玉)の結果次第では、4位陥落の可能性もあるだけに、ピリピリムードが漂った。

 W杯最終予選突入後、最大級の勢いだった。小雨降る寒空のもと、ハリルホジッチ監督の怒号が響いた。「ゲンキ~! ゲンキィィ!」。4対4で行った攻守の切り替えを重視した練習中だった。右サイドのゴール前で仕掛けた原口がボールを奪われた後、抜け出した相手を追わずにうなだれると、鬼のような形相で約30メートル駆け寄った。目の当たりにしたFW浅野は「監督は、FWも攻撃だけじゃないことを伝えたかったと思う。見ていてそう思った。要求はほとんど守備のこと。自分も意識高くやらなきゃいけないなと…」と背筋を伸ばした。

 サウジアラビアはB組最多の8得点。直近のUAE戦でも3得点するなど、その攻撃力は要注意だ。守備をおろそかにしていては勝利は遠のく。FW陣に対しても手段は選ばず、守備意識の徹底を図った。約1年5カ月ぶり復帰の大迫にもカミナリは続いた。「日常茶飯事なんでね」と気にとめない選手もいたが、修正点を明確にするために、なりふり構ってはいられなかった。

 練習開始前には選手、スタッフ全員で、センターサークル内で行った約6分間の円陣。「このメンバーで集まることができた。勝ちにいこう」と声はすでに荒かった。UAE戦での黒星で初戦からつまずいたアジア最終予選。そこから2勝1分けと持ち直したものの、依然として日本協会内にはその手腕を疑問視する声もある。厳しいゲキは負けられない危機感の裏返しでもある。

 11日の親善試合オマーン戦、15日のサウジアラビア戦と続く2試合はW杯への命運を握る。「練習で疲れるくらいまでやれ」と鼓舞する声もかけるほど、一瞬の隙も許さない。最後のランニングでは、普段はマイペースで走る指揮官みずから先頭に立って選手を引っ張った。「お疲れさま」の声に選手らは拍手で終了。ピッチを後にしても「ゲンキ~」と威嚇するように呼び止めて肩を組み“説教”は続いた。【鎌田直秀】

 ◆キレるハリルホジッチ監督 歯に衣(きぬ)着せぬ言動が目立つが、周囲には優しい面もあり、選手を批判することはあまりない。ただ、去就が騒がれだした10月の2試合は感情が不安定だった。まず9月29日のメンバー発表会見で記者から発言を「言い訳にしか聞こえない」と問われると「言い訳ではないし、あなた(質問者)に何を言われても、私の仕事は変わらない。どうぞ、皮肉な冗談を言い続けてください」と語気を強め、明らかに不機嫌になった。10月11日のオーストラリア戦前日の公式会見では「15人中12人の海外組が出場機会を得られていない。1年前なら、出られない選手は使わないつもりだった」。唐突に本音でボヤき、司会の終了アナウンスを待たず勝手に席を立った。