<アジア大会:日本2-1イラン>◇準決勝◇23日◇越秀山体育場

 U-21(21歳以下)日本代表が、悲願の金メダルに王手をかけた。4度優勝を誇るイランに前半6分に先制されて今大会初失点を喫したが、1-1で迎えた後半15分、FW永井謙佑(21=福岡大)がドリブルで3人を抜いて決勝ゴールを決め、2-1で勝利を収めた。今大会5得点目を挙げたエースの1得点1アシストの活躍でメダルが確定し、2大会ぶり2度目の決勝進出を果たした。25日のUAEとの決勝で、女子日本代表とのアベックVとなるアジア大会初優勝を目指す。

 身体能力に定評のあるイランの守備陣を、FW永井が一瞬にして切り崩した。1-1で迎えた後半15分、MF山村和也(20=流通経大)のパスをペナルティーエリア外で受けた。前を向くやいなや、DF3人を置き去りにした。「ドリブルするゾーンが見えていた。狭かったのは覚えている」。痛めている左足で踏ん張り、体をひねりながら右足を振り抜く。決勝弾がGKと逆サイドのネットを揺らした。

 19日のタイ戦で左太ももを打撲。痛みで「足が曲がらなかった」という。準決勝までの3日間はチームとは別メニューで、高酸素カプセルを利用するなど治療に専念した。正式に先発が決まったのは試合当日の午前中。選手村で関塚監督に状態を聞かれ、「いけます」と即答した。試合後、「痛かったけど、試合中は興奮していたので痛みは感じなかった」と打ち明けた。

 イランはこれまでの「格下」とはレベルが違っていた。オーバーエージ(24歳以上)3人を含み、A代表のレギュラーもいる「本物」だった。開始から猛攻を受けた。前半6分に速攻から今大会初の失点を喫した。しかし、その流れを断ち切ったのも、永井のスピードだった。0-1の前半38分、MF東のパスを受けると、一瞬で左サイドを抜け出した。DFをひきつけて、右アウトサイドでクロス。MF水沼の同点弾を演出した。

 エースの活躍に後半は守備陣も発奮した。同点でのハーフタイム。「あと1点取ったら、オレたちが守り切る」と、DF薗田は永井に伝えていたという。2-1の後半30分からは5バックにして、体ごとイランの反撃を止めた。「(センターバックは)2人とも足がつっていた」(薗田)。関塚監督は「みんなタフになった。たくましさも出てきた。成長を感じています」と話した。

 大会5得点の永井は得点ランクでも首位に立った。あの釜本邦茂氏の持つ日本人最多の大会6得点にあと1に迫った。22日には宿舎でなでしこの金メダル獲得を全員でテレビ観戦し「ますます金が良くなった」(永井)という。25日には中1日でUAEとの決勝戦を迎える。「決勝でも僕が決めたい」。悲願の金メダルと「釜本超え」を両にらみしていた。【鎌田直秀】