なでしこジャパンが28日、キリンチャレンジ杯へ向けた宮城合宿3日目を行った。DF鮫島彩(24=モンペリエ)ら海外組5人が合流し、練習生を含む28人が全員集結。鮫島は宮城・常盤木学園高や東京電力マリーゼ時代を過ごした東北の地での初試合を心待ちにしてきた。東日本大震災で被害を受けた友人や恩人たちを4月1日の米国戦(ユアスタ)に招待。自分自身の成長を披露するだけでなく、勇気を与える全力プレーで世界ランク1位の強国からの勝利をプレゼントする。

 明るい表情を見せていた鮫島の笑顔が引き締まった。

 鮫島

 仙台は高校3年間を過ごした特別な場所なので本当に楽しみ。マリーゼの時も含めた友人やお世話になった方たちもたくさん会場に見に来てくれる。テレビで応援してくれている人も含めて勇気を与えられるようなプレーをしたい。

 合流初日から、男子高校生相手の試合形式練習で、先発組左サイドバックでフル出場。アルガルベ杯で捻挫した右足首は万全ではない。足をとられ転倒しながらもボールに食らい付く必死さに、かける思いが凝縮されていた。

 単純なパスミスもあったが、男子に当たり負けしない強さや、中盤の川澄との連係でゴール前に駆け上がりクロスを上げるなど積極性も見せた。「アルガルベ杯で得た課題はたくさんある。特に1対1。男子は女子よりスピードがあるので、足りない部分も再確認できました」。米国FWワンバックの強さ、モーガンの速さへの対応策は万全だ。

 第2の故郷の惨事は常に頭から離れなかった。帰国時には東京から実家のある宇都宮を越え仙台に向かうことも多かった。昨年10月には仙台のホームゲームを観戦し、母校の練習にも参加。12月には東松島市の小学校にFW永里、熊谷と訪問。雪合戦やサッカー教室で児童と触れ合うなど、できる限り尽力した。

 鮫島

 この1年、サッカーだけでなく、仕事などでも知り合った方たちから励まされてここまで来た。みんなとのつながりを、あらためて感じている。

 無期限休部になった東京電力から、悩み抜いた末に米女子サッカーリーグ・ボストン移籍を決断。W杯後はフランスリーグに移籍し、1人暮らしで精神的にも強くなった。仙台で初披露する米国戦は、感謝の気持ちを表現する重要な一戦となる。【鎌田直秀】