J2磐田は水戸に逆転勝利し、首位を奪還した。1-1で迎えた後半16分、この日が29歳の誕生日だったMF上田康太が直接FKを決めて勝ち越した。5シーズン前に所属していた10年9月11日の湘南戦以来、磐田の選手として1701日ぶりとなる得点だった。名波浩監督(42)の後継者といわれる司令塔が、今季4試合目の逆転勝利を呼び込んだ。

 スタジアムを覆うどんよりとした雲を切り裂くように、上田の直接FKがゴール右隅に決まった。1-1で迎えた後半16分、途中出場のMF松井大輔(33)がファウルを受けてゴール前でFKを獲得。上田は転がるボールを拾うと、自分でセットした。キッカーの位置にはDF駒野友一(33)とMF小林祐希(23)も立ったが譲らない。左足から放たれたシュートは壁のわずか上を越えて、そのままゴールネットを揺らした。

 29歳の誕生日を自ら祝う勝ち越し弾だった。上田は「誕生日は関係なくて、いい位置だったので」と話したが、キッカーを譲った駒野は「誕生日だし、蹴りたそうだったから」と理由を明かした。上田の磐田での得点は、10年のホーム湘南戦(3-1)以来1701日ぶり。「勝利につながってよかった。諦めないで戦うところが出せた」と喜んだ。

 今季は、5シーズンぶりに磐田に復帰した。開幕スタメンを勝ち取ったが、3月下旬からグロインペイン症候群を発症し5試合欠場。その間、チームは4勝1分けと負けなし。プレーできない悔しさとともに「自分が入ったら、縦パスを出そう」とチームの力になることをあらためて決意していたという。ようやく今季初得点を挙げ「やっとチームのために仕事ができた」と笑顔だった。

 名波監督の現役時代と同じ背番号「7」を背負い、左利きも共通点だ。試合後の会見で、監督は上田のFKを「うーん、75点。本当は、ボール1つ分上だよね」と辛口ながらも評価。チームは今季4度目の連勝、再び首位に立った。監督の後継者といわれる司令塔は「J1昇格にはFWだけが点を取っても勝てない。スタートというには遅いけど、これから積み重ねたい」とさらなる高みを目指す。【保坂恭子】