<J1:浦和2-0鹿島>◇第6節◇13日◇埼玉

 浦和の「背番号9」がここぞのゴールで大一番を制した。昨季2冠・鹿島との直接対決で、FW永井雄一郎(29)が2得点し、2-0の勝利に導いた。後半からFW高原直泰(28)に代わって出場し、同4分にはトップ下に入った闘莉王(26)のクロスを受けて先制点。試合終了間際には追加点を決め、鹿島の連勝記録を「14」で止めた。昨季アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝でも得点&MVP獲得と勝負強い男が、本領を発揮した。浦和は今季2連敗の後4連勝で、横浜と並ぶ3位に浮上、首位名古屋に勝ち点4差と迫った。

 ガッツポーズが自然と出た。1-0で迎えた後半ロスタイム。永井が「予想していた」という相手DF大岩のバックパスを、かっさらった。飛び出したGK曽ケ端をあざ笑うかのようにかわす。後ろを振り向き、あきらめかけた相手を確認。左手で小さく拳を握りしめ、右足で蹴り込んだ。鮮やかな得点にゴール裏だけでなく、メーン、バック両スタンド、2階席まで総立ち。スタンディングオベーションを浴びた。

 2日前には持病の腰痛が再発した。11日は「ベッドから動けないくらい」の激痛で練習を回避。「試合になれば気持ちも入る」と、この日は痛みを感じながらも、走り続けた。「ピッチに立ったときに100%出さないと。それができなければベンチには入らない」。FWにとってはゴールがすべて。背番号9としての責任感を漂わせた。

 02年まで9番を背負い、今季入閣した福田コーチにいつも助言を受けている。「シュートを外して下を向くな!」。練習でのミスにうつむいても、げきを飛ばされた。そんな「うるさいぐらい」(永井)の指導でミスターレッズの番号を継承していることを意識。「フクさんに言われるなら」と、この日は決して下を向くことはなかった。

 生え抜きの意地もある。クラブが毎年繰り返す大型補強に、開幕は先発から外れた。今季は高原、エジミウソンが加入。高原が故障欠場した2試合以外はすべて途中出場だった。「それ(補強)が大きなモチベーションになった」。浦和の歴史を受け継ぐ男が、大一番でその力を証明した。

 鹿島には、優勝を目前にした昨年11月24日にホームで敗れ、続く最終節で逆転優勝を許した。その因縁の相手と、今季開幕2連敗の後3連勝しての対戦。チームの浮沈を握る一戦だった。これで首位「ピクシー名古屋」に勝ち点4差の3位。その背中は見えた。「ゴールはもう過去のこと。次の準備をする」。永井は追撃態勢を整えた。【栗田成芳】