日本サッカー協会は10日、都内で開いた理事会で、新会長にJリーグの犬飼基昭専務理事(66=同協会常務理事)を就任させる人事案を承認した。外部からラグビー元日本代表監督の平尾誠二氏(45)、テニスのクルム伊達公子(37)が新理事に加わることも内定。2人とも犬飼氏の人脈から就任を打診し、新体制のシンボルになる。3期6年務めた川淵三郎会長(キャプテン=71)から大役を引き継ぐ犬飼体制は、12日の評議員会、理事会を経て正式に発足する。

 犬飼氏はこの日、会長就任を川淵会長から直接口頭で伝えられたという。「正直、大変なことだと思いました。日本サッカーを成長、発展させるために頑張りたい」。理事会を終えると、慎重に言葉を選んだ。

 実際は、会長就任を内々で打診されており、会長権限で選べる理事4人の人選に着手していた。その中の目玉として平尾氏、伊達に絞って連絡を取っていた。「(6月)23、24日あたりだったと思う。伊達さんには『もしそうなったときに協力してほしい』とお願いしたら『喜んで…、私でできることはやらせていただきます』と返事をしてもらった」。伊達とのやりとりを説明するときは、表情もゆるみ、笑顔を見せた。

 日本サッカー協会として、他競技の元選手を理事に迎えるのは初。他競技の現役選手となれば、他団体を含めても異例のことだ。平尾氏、伊達ともに犬飼氏が浦和レッズ社長時代に培った人脈だった。少年少女をスポーツを通して育成する事業で知り合い、伊達については「子供たちへの接し方に感激した。彼女の海外での経験など、サッカー界にとっても貴重な意見になる」と話した。

 また、親交を深めてきた平尾氏については「ラグビーは試合終了とともにノーサイドになる。『そういうラグビー精神をサッカーも学びたい』と相談したら、『ラグビー界もまだまだです』と言われた。お互いに成長できることがあると思う」と明かした。審判批判などが相次ぐ中で、スポーツ選手のあり方の見直しも示唆した。

 これには川淵会長も「外部の人を入れるのは、今の時代の流れ」と支持。犬飼氏は「次はテニス界やラグビー界にサッカー界から人材が求められることもあるかもしれないしね」と、他競技との積極的な交流を狙う意図もうかがわせた。キャプテンとしてぐいぐいけん引した川淵氏の後任として、早くも独自色、自由な発想で犬飼色を打ち出そうとしている。