<J1:鹿島1-1浦和>◇第19節◇27日◇カシマ

 鹿島MF小笠原満男(29)の目は怒りに満ちていた。浦和を突き放す絶好のチャンスだった。勝てる試合がドローに終わった。やるせなさが込み上げる。試合後、無言を貫き通した。ホームでのドローは最低限の結果。だが主将に満足感は一切、なかった。

 この一戦に神経を研ぎ澄ましていた。前半39分、鹿島関係者が「かつてなかった」と口をそろえる雷雨で試合は中断。いつ再開されるかも分からず時間が流れていった。だが、控室で、前半残り約5分というわずかな時間の使い方を全員で確認しあった。「残り5分でも点を取りに行こう。ダラッと試合に入るのはよくない。前からプレスをかけに行くぞ、ということを話し合った」とMF本山は明かした。

 そして再開から27秒後。雷が遠く夜空に光る中で、まさに電光石火の1点は生まれた。MF中後が上げた右クロスをMFダニーロがヘッドで落とす。それに反応したのは小笠原だ。トラップして足元に落とすと左足をたたきつけるように振り下ろし、ゴール左隅に決めた。試合を視察していた岡田監督を「素晴らしいシュートだった。いつも頭には(存在を)入れている。いざという時のためにね」と言わしめた。

 だが浦和田中達の同点弾で勝利は消し飛んだ。DF岩政は「勝ちきれなかったことで、いい試合とは言えない」と、悔しさを押し殺すように話した。勝てば浦和を勝ち点5差に突き放せた。今は不調でも、シーズン終盤には優勝を争う最大のライバルとなる。だからこそ勝機を逃したことが、小笠原は腹立たしかった。家路につく小笠原の後ろ姿がそれを物語っていた。【広重竜太郎】