<J2:札幌3-2愛媛>◇第11節◇29日◇札幌ドーム

 野獣ダニルソンがベールを脱いだ。コンサドーレ札幌が愛媛に3-2で競り勝った。2点リードで迎えた後半23分、MFダニルソン(22)がゴール左サイドの角度のない位置から絶妙のボールコントロールで決勝弾。J初得点だけでなくボランチとして守備にもフル回転し、上里一将主将(23)不在の穴をカバーした。チームは07年4月以来732日ぶりの札幌ドーム連勝。15日の草津戦から4連勝と一気に波に乗ってきた。

 ダニルソンが、ついに目覚めた。2-0で迎えた後半23分、ピッチ中央でMFクライトンがドリブル突破を図ると、左サイドからダニルソンが駆け上がる。40メートル猛ダッシュして、クライトンを追い越し、自陣に戻るDFも一気に追い抜くと、ゴールラインぎりぎりでパスを受け、腰を切り返して左足を振り抜いた。

 「GKはクロスを上げると予想していたと思ったので、ゴールへパスする感覚で打った」。鋭いシュートは、GK山本の右足と左ゴールポストのわずか数十センチの間をすり抜けゴール右隅へと吸い込まれていった。クライトン、キリノに続きラテントリオの“三男”が、ようやく結果を出し石崎監督も「いい守備をしているので、つられて攻撃も良くなってきている」と目を細めた。

 潜在能力にほれ込み、獲得した逸材がついに能力を開花させた。ブラジル人選手は3~4週間でビザが発給されるのが通例。ダニルソンの場合、移籍例の少ないコロンビアとの交渉だけに、申請から2カ月近くたってもビザが発給されない事態に陥った。クラブ側が、コロンビアサッカー協会にまで掛け合い、ビザ発給を前倒しするよう頼んだ経緯があった。

 「そこまでしてもほしい選手だった」と三上強化部長。沖縄で行われた2月のプレシーズンマッチで見せたミドル砲2発で注目を集めたが、開幕後はミスを連発し、途中交代させられることもあった。チームにフィットできず苦悩していた助っ人ボランチが、ようやくプレッシャーの速い日本のサッカーへの対処法をつかみ始めている。

 ダニルソンは「まだ完全ではない。日本のサッカーに慣れれば、もっと自分の特長を生かすことができる」と、さらなる進化を目指している。今月中旬に予定していたマルリ夫人とフィリップ君の来日はビザ取得の問題で延期。5月下旬まで家族との対面はお預けとなったが、今の札幌には寂しさを吹き飛ばすだけの勝利の笑顔があふれている。【永野高輔】