<J1:鹿島2-1大分>◇第15節◇28日◇九石ド

 MF小笠原満男(30)の「みそぎの一撃」で、首位鹿島が大分に逆転勝ちし、リーグ戦の連勝を7に伸ばした。小笠原は1点を追う後半16分に嫌な流れを断ち切る同点ゴールを決め、同27分には左CKでDF岩政大樹(27)の決勝ゴールを演出した。24日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦FCソウル戦で退場となって敗退の責任を1人で背負い、チームメートへの謝罪の気持ちをプレーで示した。

 胸に募る悔しさを振り払うかのような一撃だった。0-1で迎えた後半16分、MF野沢の浮き球のパスに反応した小笠原がペナルティーエリアに走り込むと、右足を一閃(いっせん)。「枠に飛ばせばいいと思った。ゴールはおまけみたいなものだけど、やはりうれしい」。豪快なボレーで同点。だが、そこには喜びもせず、逆転勝利だけを見すえる男の姿があった。

 その思いが同27分に結実した。左CK。蹴る前に腕を振り「相手GKが前に出てくるのでGKの前に1人立ってほしかった。ゴール前も(意図を)感じてくれた」と、冷静に指示を出した後に放たれたボールはゴール前でこぼれ、岩政の逆転ゴールを演出した。

 勝たなければならない理由があった。悲願のアジア制覇が消滅したFCソウル戦で試合途中に退場処分を食らった。「あの試合は忘れられない。負けただけではなく、自分の退場で迷惑をかけてしまった」。後半19分に退場してから控室に戻り、試合終了後まで着替えることすら忘れ、汗まみれのユニホーム姿のまま自責の念に打ちひしがれた。

 一時はチームメートへの謝罪をほのめかしたが「謝るのはやめた。ごめんと言うのは簡単だけど、プレーで貢献した方が口で言うよりいいと思った」。ACLから中3日の疲労、高温多湿、芝生がめくれやすいピッチと悪条件にチームが苦しむ状況下で、責任を背負う決意を固め、前へ前へ突き進む背番号40の背中は普段以上に大きく映った。

 リーグ戦はこれで7連勝、12戦負けなしと単独首位を突っ走る。「リーグで優勝して来年こそは(ACL制覇)というのはある。リーグはまだ続く。どんどん勝っていきたい」。ピッチの中心で日本代表クラスの動きを続け、勝利を叫ぶ闘将の姿がある限り、鹿島の独走は止まりそうもない。【菅家大輔】