<J1:川崎F2-0名古屋>◇第21節◇15日◇瑞穂陸

 194センチの「怪物」が頭を押さえてピッチ四つんばいになった。視線は泳ぎ、驚きの色が顔に浮かぶ。前半22分。Jデビューから4戦連発を狙っていた名古屋FWケネディに、ひげ面の野武士のような若武者が「頭突き」を食らわした。プロ2年目の川崎FのDF菊地光将(23)が、日本代表も苦しみ続けた難敵をパワーでねじ伏せた。

 182センチ、72キロとケネディより一回り小さいが、常に一歩先に体を当て、前半7、27分にも引きずり倒した。後半5分にはゴール前に飛び込んだケネディを体で止め、ピンチを防いだ。攻撃でも前半11分に相手ボールをカットし、FWジュニーニョの先制弾の起点となった。後半28分に両足がつって交代し「まだまだ。ケネディを止めた印象もない」と苦笑いしたが、攻守にMVP級の活躍だった。

 2年目の今季、ボランチからセンターバックに完全にコンバートされ、才能が一気に開花した。07年、8クラブ競合の末に獲得した関塚監督は「1年目は速さを生かそうとMFで使ったが、今年のチームには強さと高さが必要だった。プロに慣れさせるためにもDFから入るのがいいと思った」と説明。自身の監督通算100勝達成に貢献した、菊地の活躍に目を細めた。

 今季初先発した4月29日の京都戦でセンターバックとして起用され、菊地は定位置をつかんだ。日々飛躍的に成長する姿は、同監督が04年に2列目からボランチにコンバートし、日本代表になったMF中村のようだ。「自分が去年からどう変わったかは分からない。でも2年目だし、プロに慣れないのはおかしい」。センターバック不足が叫ばれる日本に、あらたな「壁」として菊地が名乗りを上げるかもしれない。【村上幸将】