【グアム4日=永野高輔】ゴンが、ムードメーカーぶりを発揮した。J2札幌グアムキャンプは16日目を迎え、負傷者が目立ってきた。この日午前練習に参加した選手は今キャンプ最少の14人となったが、沈滞しがちな雰囲気を、元日本代表FW中山雅史(42)が変えた。右足内転筋付着部炎のため別メニュー調整ながら、ピッチ脇から激しいゲキを飛ばしもり立てた。自らも午後練習から初めてロングキックを試すなど順調な回復を見せ、早期合流への闘志を見せた。

 ゴン中山の軽やかな一声で、まん延する疲労感が吹き飛んだ。午前練習中、グラウンド脇でランニングしていた中山が、ふとピッチ内に目をやった。やや速度を落とし練習風景を観察していると、ある巨漢選手が華麗に宙を舞う姿が目に入った。身長186センチ公称85キロの体格を誇るGK佐藤だった。

 体脂肪率12%以上のため4部練習組に入っている重量感たっぷりの佐藤が、鮮やかな横っ跳びを繰り返していた。中山は「おっ!

 飛べるねっ!」と絶賛。続けて、赤い練習着を着て奮闘する姿を独特の表現でたたえた。「“紅のなんとか”だ。飛んでる飛んでる!

 いいね!

 飛べなくなったらただの“なんとか”になっちゃうからねっ!」。疲れもたまり、声もまばらになりかけたイレブンは、この一言に爆笑となった。

 冷やかしじゃない。負傷離脱者が相次ぎ、この日の午前練習に参加した選手は今キャンプ最少の14人だった。別メニューの身ながら、なにか自分にできることはないかと、常にチームを目で追い続けていた。その心遣いが思わぬゴン「ゲキ場」につながった。

 大ベテランが発したユーモアたっぷりの一声が一遍にムードを変えた。「(佐藤は)いいジャンプ、いいバネをしていたよ」と中山。直接ゲキを受けた佐藤も「必死で追い込んでいるゴンさんに励まされると自分もやらなきゃという気持ちになる」と熱かった。佐藤は今キャンプでチーム一となる約5キロの減量に成功。序盤の別メニュー調整を中山の隣でこなすうちに、自然と自分への厳しさも身についていたようだ。

 午後練習でも、中山はアップだけの全体練習参加ながら「声合わしていこうぜ!」と率先してもり立てた。初めて40メートルのロングキックを試すなど回復も順調。状況をチェックした石栗フィジカルコーチは「明日の状態を見て問題なければ柏戦(6日)の後ぐらいにボールを使ったメニューに(部分)合流できるかも」と見通しを話した。ゴン節同様、肉体の方も徐々にキレが増してきた。