<ナビスコ杯:清水2-0磐田>◇6日◇1次リーグ◇B組◇アウスタ

 初めて踏む「静岡ダービー」の舞台で、静岡が誇る宝物が躍動した。清水MF小野伸二(30)だ。予選敗退危機の中、守備を固める磐田に対し、完ぺきにコントロールされた2本のFKで2得点に結び付けた。次元の違うスルーパス、ボールキープ、トラップと、体を張った守備で勝利に導いた。1次リーグ全戦を終え、暫定首位に立ったが、3年連続決勝トーナメント進出は微妙な状況だ。それでも、ピッチに笑顔があふれたのは、小野と紡いだサッカーが楽しかったからだ。

 まるで魔術師だ。前半38分、小野はセンターサークル付近からのFKを、真っすぐ伸びるボールでFWヨンセンの頭にピンポイントで供給。折り返しをMF兵働-FW永井とつないで先制点を奪った。さらに後半17分、敵陣の右サイドからのFKは、今度はボールの側面を強くこすり上げて、鋭くカーブさせ、ファーサイドのボスナーの頭に合わせた。1度は相手GKに阻まれたが、最後はDF平岡が押し込んだ。

 確かな技術が生み出す「神業」を、初の静岡ダービーで見せつけた。「(1本目は)あの1点でチームが活気づいた。冷静に永井さんが決めてくれた。(2本目は)自分でもいいボールだったと思う。ゴールが決まってくれてうれしかった」と、満足げに振り返った。後半20分には、自ら放った右ミドルがポストに嫌われ「決まっていれば、ぼく的にも最高だったんですけどね」と、残念がったが「思っていたとおりに蹴れたから、外れはしたけど、よかったと思う」と笑った。

 FKやシュートシーンだけじゃない。前線へ絶妙なスルーパスを連発。華麗なリフティングでボールをキープしたり、後ろに足を伸ばしてヒールでトラップするなど「いつも楽しんでサッカーをやっている」という言葉通りのプレーで、何度もスタンドを沸かせた。

 自他共に認める好調ぶりを発揮した司令塔を、長谷川監督も「(今日は)伸二を代えるつもりはなかった」と、90分間フル出場。終盤には、磐田FWイ・グノの突破に対し、自陣の最後尾まで戻り、スライディングでブロックした。後半途中にMF兵働主将が交代してからは、右腕にキャプテンマークをつけ、最後までチームをけん引し続けた。

 この日を含め、小野が先発した公式戦13戦は9勝4分けで負け知らず。決勝トーナメント進出は他会場の結果待ちだが、W杯中断前、最後の公式戦も例外なく白星で締めくくった。【為田聡史】