サッカー元日本代表でJFL(日本フットボールリーグ)松本山雅のDF松田直樹(34)が2日午前、急性心筋梗塞のため、長野県松本市内のグラウンドで練習中に突然倒れ、同市内の病院に緊急搬送された。搬送時には意識がなく、心肺停止状態だったという。集中治療室(ICU)で人工心肺装置を使って血流を維持し、微弱ながら心臓の鼓動は戻ったが、同日夜に会見した担当医は「極めて厳しい状況」と説明した。日本代表として02年日韓W杯ではベスト16入りに貢献。今季からは16年間在籍したJ1横浜を離れ、松本山雅の主力としてチームのJリーグ昇格を目指していた。

 会見した松本山雅の大月弘士社長や加藤善之監督によると、松田は松本市の梓川のグラウンドで午前9時半すぎに始まったチーム練習に予定通りに参加した。ウオームアップの約15分間のランニングを終え、立った姿勢で脈拍を計測しながらストレッチしていた時に「やばい、やばい」と言いだし、近くの選手に体調不良を訴えながら横に倒れ込み、意識を失ったという。

 異変に驚いた同僚たちが「マツさん、マツさん」と呼び掛けたが、返事はなかった。チーム関係者が同10時すぎに119番。救急車が到着するまで、トレーナーと練習を見学していた看護師の女性が心臓マッサージや人工呼吸などの応急措置を施した。その後、松本市内の大学病院の救命救急センターに搬送された。倒れてから約50分後に病院に到着したときは、心肺停止状態だったという。同クラブはAED(自動体外式除細動器)を常備しておらず、練習グラウンドにも設置されていなかった。

 ICUで検査を受けた結果、急性心筋梗塞と診断された。すぐに人工心肺装置で全身の血液の循環と呼吸を維持する緊急措置がとられた。今村浩医師は「人工心肺によって生命を維持している」と説明。微弱ながら心臓の鼓動は戻り、脳死の可能性も否定したが、回復の可能性については「極めて厳しい状況」と話し、「全力を尽くしています」と奇跡的回復を目指し、さまざまな治療を行っていることを明かした。

 チーム関係者によると、最近も体調に異変は感じられなかったという。7月30日のリーグ戦(対町田)には累積警告のため出場しなかった。同31日、松本市内で行った練習試合に75分間出場して交代。翌8月1日はオフで横浜に出掛け、その日のうちに松本市内に戻っていた。2日朝も同僚の車に同乗して練習グラウンドに駆けつけた。加藤監督は「特に異変は感じなかった」と話した。

 病院には松田の家族も駆けつけた。姉真紀さんは大月社長に「今、松田直樹は頑張っております」と手紙をしたため、会見で同社長が代読。さらに夜になると一報を聞いて元チームメートらが続々と病院に駆けつけた。横浜のMF中村俊輔、GK榎本哲也をはじめ、横浜や代表で同僚だった城彰二氏、安永聡太郎氏、元同僚のJ2札幌MF河合竜二らが病院で松田を見舞った。

 松田はアトランタ、シドニーの両五輪に主力として出場。02年W杯日韓大会ではトルシエジャパンの守備の要としてベスト16入りに貢献。プロデビュー以来、16年間在籍した横浜では3度のリーグ優勝を経験。昨年末に横浜を退団し、今季から新天地に選んだ松本山雅で主力として活躍。Jリーグ入りを目指すチームを、ベテランとしてけん引してきた。【松田秀彦】