<J1:神戸1-2鹿島>◇第13節◇26日◇ホームズ

 神戸の西野朗新監督(57)が初陣星を逃した。就任後初戦となったホーム鹿島戦は1-2で惜敗した。G大阪を率いた昨年12月の最終節以来、半年ぶりに現場復帰。敗れはしたが、逆転を狙った後半にFW4人を前線に並べるなど、持ち味の超攻撃的采配を披露した。神戸はリーグ3連敗。名将の改革は、黒星から始まった。

 ベンチに座り込んだまま、西野新監督は動けなかった。初陣を落とした悔しさと、半年ぶりに味わった現場の余韻。2つの感情が頭の中で交差した。数分後に立ち上がると、引き揚げてくる選手を迎えた。2万人を超える大観衆の前で、持ち味の超攻撃的スタイルを出した。手応えがあった。だから白星が届かなかったことが心残りだった。

 「現状と未来に対し、やりがいを感じながらピッチに立っていた。久しぶりに1プレーの厳しさだとか、試合のテンポの違いを感じた中で、神戸の良さも感じることはできた。結果も、スタイルも共感されるよう、並大抵のことではないが、着実にやっていく」

 人生の全てを監督業にささげると決めている。01年途中に柏を解任された日、ドイツ製の4輪駆動車を買った。常に自分の原点を忘れないため、10年以上がたつ今も乗り続ける。昨年末G大阪退任が決まった時も、今月20日に初めて神戸市内の練習場を訪れた時も、その愛車に乗って来た。華やかなイメージとは対照的に、常に反骨心を抱きながら生きてきた。決して強くはない神戸の指揮を執ることを決めたのも、泥にまみれた愛車とともに「生涯監督」と決めていたからだ。

 取られたら、取り返す-。この日も後半45分にFW田代のゴールで1点差にすると、同ロスタイムのFK時には、GKを除く全員をゴール前に上げた。ゴール前のこぼれ球、大久保が必死に足を伸ばしたシュートがGKに阻まれると、頭を抱えて悔しがった。チームは3連敗で14位。それでも、敗戦の中に光は見えた。西野神戸は、逆境からはい上がる。【益子浩一】