<高校サッカー北海道大会:札幌大谷3―3(5PK4)帯広北>◇27日◇決勝◇札幌厚別公園競技場

 札幌大谷が創部5年目でのスピード初優勝を果たした。帯広北との決勝は延長を含む100分間で3―3の同点という激闘。もつれ込んだPK戦を5―4で制し、今夏の高校総体に続く全国(12月30日開幕、東京・国立競技場ほか)出場を決めた。女子校から共学に移行した09年に創部。常に全国を意識したチーム作りで、全道屈指の強豪にわずかな期間で成長した。新たな1歩を踏み出したイレブンが、念願の全国初得点初勝利に挑む。

 ボールを両手で静かに置いた後、5人目のキッカーMF高橋和史(2年)は祈るように数秒、ピッチに目を落とした。2人目が失敗した帯広北に対し、札幌大谷は4人目まで全員が成功。ゆっくりとした助走から右足でゴール右に蹴り込んだ瞬間、大会史に新たな1ページが加わった。重責を果たした高橋が「落ち着いて決められました。本当にうれしい」と感極まった。

 苦闘だった。前半を2点リードで折り返しながら後半早々に失点。同18分に再び突き放したが、2点を奪われ、追い付かれた。延長でも決着せず、PK戦へ。「追いつかれても最後まであきらめない気持ちがプレーに出ていました。それが勝ちにつながった」。胴上げで4度宙を舞った田部学監督(39)が、瞳をうるませた。

 4年前、歴史は11人の1年生で始まった。初年度は公式戦全敗。メンバーの負傷時は9人でも10人でも練習試合に臨んだ。部員で雑草を抜いて荒れた天然芝の練習グラウンドを整備。昨年は夜間照明が設置された。専門コーチ不在のGKは「今も自分たちが練習メニューを作っています」と、GK浅川夏輝(3年)。不足はありながら、少しずつ前進を続けてきた。

 それでも創部時から「全国で勝つチーム」を掲げる指揮官の下、選手は競い、力を付けてきた。準決勝で無得点だったFW村松謙(3年)は「決勝で使ってもらえるか、発表まで心配でした。でも厳しい環境が自分を成長させてくれました」という。入学時に「試合に出たいだけ」だった村松の思いは「プロになりたい」に変わり、この日の先制ヘッドにつながった。

 そして初めて北海道の頂点に立った。全道準優勝で全国切符をつかんだ過去2度の高校総体は未勝利で無得点。「ゴールして勝って、歴史を変えます」と、主将のMF中本怜男(3年)は力強く言った。室蘭、登別、そして札幌。道内サッカー界に誕生した3番目の「王者・大谷」が、年末年始をわかしてくれるはずだ。【中島洋尚】