<J1:柏2-0横浜>◇第14節◇11日◇日産ス

 まさに、「必殺仕事人」だ。首位の柏がFW田中順也(23)のリーグ戦2戦連発と、FW北嶋秀朗(33)の見事なヘディングシュートで横浜を下した。故障者が相次いだセンターバックも、サイドバックが本職のDF橋本和(24)を起用し完封。シュート数はたったの4本。コーナーキックは1つもなかったのに勝ってしまう。一撃必殺の玄人芸が、首位まっしぐらの原動力だ。また、ネルシーニョ監督(60)はJ1・77勝目をマークし、J2での23勝と合わせ通算100勝となった。

 相手の動きが手に取るように分かっていた。前半26分に田中がエリア内でボールを拾う。相手が立ちはだかったが迷わずシュート。ボールは股を抜き相手GKの手も越えてゴールに吸い込まれた。田中は「シュートコースは見えてました。股抜けば入るかな、と」。足を広げることは織り込み済み。どんぴしゃのタイミングで仕事を成し遂げた。

 さらに同37分には北嶋も一仕事。相手守備が「ばらけていた」ことを見破った北嶋は、体半分しか入らないスペースに飛び込む。右からのクロスをわずかな点でとらえ、GKがつくり出したほんの数センチの隙間に頭で流し込んだ。「ボールが来ると分かっていた」と笑顔。得意の形に持ち込むベテランならではの勘がさえていた。

 16対4。シュート数で4倍の差をつけられコーナーキックは1つもとれなかった。数字は劣勢だがネルシーニョ監督は「問題なかった」と顔色ひとつかえない。負傷者が相次いだセンターバックも試合前夜にDF橋本の起用を決断。試合直前にメンバー発表する柏の勝負師は異例の行動に出たが「自信をもって」送り出した。

 田中は「いかに相手に触れないでプレーするか」と体の向きや足さばきを研究している。北嶋も「耐える時、攻める時の見極めが出来ている。(快進撃は)驚くことではない」と戦局を操る軍師のよう。U-22日本代表でDF酒井が離れるが「チーム力が問われるが、力はある」と北嶋。「必殺仕事人」がそろう柏に、死角は見当たらない。【加納慎也】