ドイツ2部ザンクトパウリのFW宮市亮(23)が、自信を取り戻そうとしている。昨季開幕直前の左膝前十字靱帯(じんたい)断裂の重傷から復帰。オフの自主トレではけがをしない体作りにトライした。ドイツに出発する前に日刊スポーツの単独インタビューに応じ、欧州での7季目に向けて思いを語った。

 グングン伸びるスピードに、力強さまで伝わってくる。夏目前の日本で宮市は「復活」の2文字を追いかけるように芝生の上を駆け抜けた。「サッカーの動きに歩くこと、走ることは基本。そこにまず立ち返ることができた」。オフの自主トレで手応えをつかみ向かったドイツでは、すでにチームに合流している。

 昨季開幕直前の7月に左膝前十字靱帯断裂を負い、今年4月に復帰。5月のリーグ最終節カイザースラウテルン戦で先発し、2得点1アシストを記録した。

 宮市 ピッチで結果を残せたことで、ボヤッとしていたものが点になって「やってきたことが間違っていないんだ」と思えた。これまでいろんなアプローチをしてきたけど、プロ5、6年目でやっとやり方をつかめて、けがをしにくい体になったと思います。

 昨秋、元陸上選手の杉本龍勇トレーナーと出会い、復活へのプログラムに入り、歩き方から見直した。ダッシュをした後、以前は太もも裏に生じていた筋肉痛が腰回りにくるようになった。生まれ持った脚力に頼っていた過去と違い、足への負担が減った。体への自信は自然と心に及ぶ。

 宮市 試合に使ってもらえれば結果を残せる自信はある。出れば自然と2桁得点に乗ると。ずっと心技体をケアしてきた。アーセナルでの僕のメンタリティーじゃ成功できないから。

 愛知・中京大中京高から加入したプレミアリーグの強豪アーセナルでは期限付き移籍とけがを繰り返し、昨季ついにザンクトパウリへ完全移籍した。海外で自分の良さを発揮できる自信がなくなったとき、一番熱心に誘ってくれたクラブだった。アーセナルを出て大きな違いを感じたことがあった。

 宮市 アーセナルでは自分の能力を疑っている選手は1人もいません。自分だけを信じている。監督のベンゲルにだってペコペコしない。ザンクトパウリでもすごく能力のある選手がいる。でも「もっと上のレベルでやれるよ」って言っても「オレなんか…」ってなってしまう。「その差」だと思います。そういう意味で18歳からアーセナルにいけたのはよかった。

 移籍のときベンゲル監督に別れは告げなかった。ただ、アーセナルで感じた勝者のメンタリティーは忘れず心に染み込ませている。今夏、そのアーセナルに浅野(広島)が入ることをニュースで知った。スピードが武器と共通項もあるFWに宮市しか知り得ない経験をもとにエールを送った。

 宮市 僕の経験から言わせてもらうとアーセナルのようなレベルの高いクラブに行くと、日本でやっていたときと同じような自信を持ち続けるのは簡単ではありません。通用していた部分が、通用しなくなったり、本当に練習からレベルが高いですから。偉そうなことを言うようですけど、浅野選手にはどんな状況でも、絶対に自分の良さを見失わないように、やってもらいたいと思います。

 では宮市が、この先に見るものは?

 宮市 自分の中で日の丸というのもあるんですけど、選手としてプレミアに戻りたい。プレミアにいけば代表も自然と見えてくる。厳しい思い、苦しい思いしかしてこなかったこの5年間をまずは生かさないと。

 足踏みした5年の月日を助走に変えて、さらに加速する。【取材・構成=八反誠、栗田成芳】

 ◆宮市亮(みやいち・りょう)1992年(平4)12月14日生まれ。愛知県出身。11年に中京大中京高からプレミアリーグのアーセナル入り。オランダのフェイエノールトやトウェンテ、イングランドのボルトン、ウィガンへの期限付き移籍。昨夏からドイツ・ザンクトパウリへ完全移籍。日本代表で国際Aマッチ2試合出場。183センチ、71キロ。

 ◆宮市の今季 ドイツ2部の開幕戦は8月8日にアウェーで1部から降格したシュツットガルトと対戦する。ホーム開幕戦は13日のブラウンシュバイク戦。今月中旬にはオーストリアでキャンプを行い、30日にMF清武が移籍したセビリアと練習試合で対戦する予定。