<世界陸上>◇19日◇女子800メートル決勝◇ベルリン五輪スタジアム

 ラスト1周の鐘が鳴った。トップに立った18歳のカスター・セメンヤ(南アフリカ)が残り200メートルからスパートすると、後続との差は広がるばかりだった。自己記録を1秒27短縮し、1分55秒45でゴール。前回優勝した2位のジェネス・ジェプコスゲイとは2秒以上の差があった。

 今年になって彗星(すいせい)のように現れた新鋭は、国際陸連がその性別を医学的に調査している。ただ本人は子供のころから女の子として育っており、同陸連も「競技以上に彼女の人間としての問題になる。非常に繊細な問題であり、慎重に扱わねばならない」(デービス広報部長)と歯切れが悪い。

 性別論争に火が付いたのは7月末のアフリカ・ジュニア選手権。昨季まで2分も切れなかったセメンヤが、1分56秒72の今季世界最高をマークした。逆三角形の体形や骨太の顔立ちは少年のようでもあり、疑う声が高まった。

 レース後の記者会見をセメンヤは欠席。3位になったメドーズ(英国)は「うわさは聞いていた。自分は念願のメダルを取ったから、あとは国際陸連がどう対処するかだ」と成り行きを注視した。