<8月前半の陸上競技展望>

 高校生にとって最大目標であるインターハイ(全国高校総体)と、世界のトップアスリートにとって最大目標のオリンピック。2つの最大目標の大会が内外で続いて行われる。

 インターハイは8月1~2日に大会4日目と最終日が実施される。今年一番の注目は男子短距離だが、4日目の200メートルは過去最高の激戦が予想されるのと同時に、18年ぶりの高校記録更新が期待されている。

 記録では20秒82の高校2年最高記録を持つ橋元晃志(川薩清修館高3年)がリードしている。中学まで全国的には無名の存在だったが、川薩清修館高の監督でもある父・幸公氏の指導を受け急成長した。昨年のインターハイは2位、世界ユースでも4位と大舞台にも強い。

 今季の記録では桐生祥秀(洛南高2年)が20秒88でトップ。国体の中学3年生と高校1年生のクラスである少年Bの100メートルで昨年優勝して注目を集めた。200メートル前世界記録保持者のマイケル・ジョンソン(アメリカ)ばりに、上体を立てて高速ピッチを繰り出すのが特徴。

 100メートルの高校記録保持者である大瀬戸一馬(小倉東高3年)は200メートルはやや苦手か。だが、2日目の100メートルで勝つと勢いに乗って手がつけられなくなるかもしれない。昨年も3位と、インターハイでは200メートルも結果を残した。

 中学記録保持者の日吉克実(韮山高2年)も6月に向かい風で21秒27で走っている。21秒を切って来る可能性は十分だ。

 高校記録は高橋和裕(当時添上高3年)が1994年に出した20秒57。100メートルでは大瀬戸が、高橋の高校記録を今年4月に破った。200メートルでも今大会の優勝者が更新する可能性は十分あるといえそうだ。

 インターハイ終了翌日にはロンドン五輪の陸上競技が始まる。全競技に女子選手が出場する初めての五輪で、日本の吉田沙保里(レスリング)をはじめ選手団の4割で女性が開会式の旗手を務めた。

 陸上競技も18人と東京五輪を上回り、過去最多の女子選手が出場する(陸上競技全体の人数は46人で歴代3番目)。それを象徴するのが女子4×100メートルリレーの48年ぶり出場だろう。

 エースの福島千里(24=北海道ハイテクAC)が前回の北京五輪で56年ぶりに女子100メートルに出場。一昨年のアジア大会2冠、昨年の世界陸上2種目準決勝進出など、五輪出場をきっかけに女子短距離のレベルを引き上げてきた。陸上競技では戦後最年少代表となった土井杏南(16=埼玉栄高2年)や、美人選手として注目される市川華菜(21=中京大4年)らが福島に続いた。

 100メートル障害の木村文子(24=エディオン)、20キロ競歩の大利久美(27=富士通)らも美人選手として話題になっている。女子のハードル種目で2人が代表となったことも、女子競歩で3人がフルエントリーしたのも初めて。美人選手出場にはそうした背景がある。

 以前は高校時代がピークだった女子選手が、卒業後もそれぞれの環境で競技力を伸ばし始めた。指導者たちの努力もあり、女子強化の道筋が多くなった結果が今回の最多出場となった。

 選手たちの出場の経緯や背景などを知っておけば、ロンドン五輪をいっそう面白く見ることができる。日刊スポーツ陸上競技選手名鑑http://london2012.nikkansports.com/athletics/member/top-member.html【8月前半の主な陸上競技大会】7月29日~8月2日:全国高校総体(新潟ビッグスワン)8月3日~8月12日:ロンドン五輪陸上競技(五輪メインスタジアム)