日本女子の18歳の大型新人が4大大会初の本戦入りを果たした。米国人の父と日本人の母を持つ世界145位の大坂なおみが、予選決勝で同150位の張■琳(中国)を6-2、6-1のわずか64分で下した。4大大会予選3大会目の挑戦で、けた違いの強さを見せた。

 「バチン!」。ものすごい音が7番コートに響き渡った。大坂が、思い切りサーブを打った音だった。計測は時速190キロ。錦織より2センチ高い180センチの長身から、父親譲りの強靱(きょうじん)なバネで放たれた弾丸サーブに、会場がどよめいた。

 試合にならなかった。パワーだけでなく、昨年12月から学んでいる「忍耐」で、安定性も増した。わずか3ゲームしか与えず。勝利の瞬間も、まるで勝って当然とばかりに相手と淡々と握手。「本当にうれしい。でも、ここからがスタート」と、最後までクールだった。

 女子ツアーでも、注目の新人として知られる。14年7月に米国で行われたツアー大会1回戦で、元全米女王のストーサー(オーストラリア)を撃破。昨年の10月に、女子ツアーの新星たった4人のうちの1人として選ばれ、シンガポールで行われた「ライジングスター招待」に出場。見事に優勝を飾った。

 武器は、もちろんサーブだ。昨年9月の東レ・パンパシフィック1回戦では、時速201キロを記録した。女子の最速は14年にリシキ(ドイツ)がマークした211キロ。時速200キロ台を打つ女子選手は非常に少ない。大坂の憧れのセリーナ・ウィリアムズ(米国)も、その1人だ。

 ハーフとして、嫌な思いをしてきたこともあるという。黒人のセリーナがしばしば差別的扱いを受けながら、堂々と世界女王として君臨するところに共感を覚える。「本戦で対戦したいのはセリーナ」。そのセリーナと対戦するには決勝まで行かなくてはならないが、1回戦の相手は、同102位のベキッチ(クロアチア)。十分に初出場初勝利のチャンスはある。【吉松忠弘】

※■はリッシンベンに山その下に豆

<大坂なおみアラカルト>

 ◆3歳からテニス 1997年(平9)10月16日、大阪市生まれ。3歳で1歳上の姉まりの影響でテニスを始める。大阪の靭(うつぼ)テニスセンターで練習していた。4歳で米国に移住し、フロリダのフォートローダーデールに居住。

 ◆姉妹 1歳違いの姉まりもプロテニス選手。ツアー下部大会が主戦場で最新の世界ランクは456位。父レオナルドさんはハイチ出身の米国人。母は環(たまき)さん。

 ◆国籍 日本と米国の2つの国籍を持つ。しかし、「心は日本人に近い。落ち着いているし、日本の食べ物も好き」と、最終的には「日本代表を選びたい」と言う。好きな食べ物はうなぎ、焼き肉、すし。

 ◆五輪 女子国別対抗戦フェド杯で日本代表としてプレーしていないため、リオデジャネイロ五輪の出場資格を満たしていない。「夢は東京五輪出場」。

 ◆所属 日本協会にプロ登録していないため、所属先はない。プロ登録しなくても、海外ツアー転戦に支障がない。