第10回アジア水泳選手権大会(11月17~20日、東京辰巳国際水泳場)のシンクロナイズドスイミング選考会が22日、都内で行われた。

 代表チームは2020年東京五輪・パラリンピックへ向けて動きだしており井村雅代ヘッドコーチ(HC、66)も、選考会での選手の泳ぎに鋭い目を光らせていた。「東京で戦うには選手の大型化を目指したい。今日の選考を踏まえて10月10日にアジア選手権のメンバーを決めたい」と、今後の予定にを説明した。

 ひときわ言葉が鋭くなったのは、デュエットで乾と組みリオ五輪で銅メダルを獲得した三井梨紗子(22=ミキハウス)の名前が出た瞬間だった。引退とも現役続行とも明確な態度を示さず、21日のミキハウスの主催の報告会では「引退というよりもゆっくり考えたいです」と立場を説明していたが、井村HCは容赦なかった。「休養という立場ですが」との質問が飛ぶと「何をふざけてんねん。あり得ないそんなこと」と一刀両断。「彼女は私に引退を伝えました。正式な書類も出ています。それが事実です。私は『もっと力を使い切って終わりにしたらどう?』と(現役続行を)勧めましたが『もう泳ぎたくない』とはっきり言いました。休養して戻れるほど甘くはない。もう戻る場所はない」。HCの立場から明確に「もう泳ぎたくない」と明確な意思を示した三井は戦力外との態度を示した。

 井村HCは、時折無念な胸中ものぞかせた。「彼女はまだ限界じゃない。それは伝えたし、力はまだ伸びると思う。水着のサイズも2サイズも変わって、本当に力がついたのに。リオ五輪で銅メダルを取って、彼女はようやく一流に入ったところなのに」と、厳しい中にも三井への愛情を感じさせる表情も見せた。

 しかし、11月のアジア選手権に来年は世界選手権も控えている。三井が抜けたデュエットの構想も、代表チームの編成には待ったなしの状態だ。「私は北京五輪でホスト国のHCを務め、開催国で五輪に出ることのすばらしさを体感した。あんな、素晴らしい思いを感じないでやめてしまうなんて考えられない。三井は臨めばその体験ができるというのに。何もリオ五輪までの2年と同じような厳しい時間がこれから4年続くわけじゃない。メダルを獲得して新しいシンクロとの付き合い方がはじまるのに…」と、未練を口にしつつ先を見詰めた。

 「乾と組ます選手も練習しています。名前は言えません。でもアジア選手権ではデュエットにエントリーしようと思っています。乾はまったく動揺していない。大したものです」と、吹っ切るようにこの先の展望を口にした。「(デュエットには)何年もかけてきたのを、(アジア選手権までの)1カ月でやるというんですから…。無理やりやってみましょう。無理やりは得意ですから」と、井村HCは自分の心に踏ん切りをつけるように快活に締めくくった。