世界5位の錦織圭(26=日清食品)が、今季ツアー2勝目、通算12勝目に王手をかけた。2本のマッチポイントをはね返し、同37位のミュラー(ルクセンブルク)に4-6、7-6、6-3で勝ち、決勝に進んだ。前日の準々決勝では過去4戦全敗だった09年全米覇者のデルポトロ(アルゼンチン)にストレート勝ち。これで今季通算55勝で、自身年間最多勝利を挙げていた。

 天敵から初白星の次は大逆転勝利だ。過去2戦全勝のミュラーに錦織は思わぬ苦戦を強いられた。第2セットの4-5で2本のマッチポイントを握られた。しかし、絶品のロブとサーブで切り抜け、最後は最終セット勝率歴代1位の底力で突き放した。「とにかく厳しい試合だった」と、勝利の瞬間、何度もガッツポーズを繰り出した。

 第1セット4-3までは、完全に錦織ペース。相手のサービスゲームを1度破り、主導権を握った。ラリー戦になれば、相手にミスが出たことから「全力で打つのをやめてしまった」。守りに入ったことで相手が開き直り、逆に流れを持っていかれたが、負けるわけにはいかなかった。

 前日に過去4戦して全敗、セットさえ奪えなかったデルポトロに勝った。最後に戦った12年ロンドン五輪準々決勝から4年。「4年前の自分とは違う」という自信と経験でストレートで葬った。「勝ったことがなかったので、すごくうれしい」。その勝利を無駄にしなかった。

 この日、ミュラーに20本のサービスエースを奪われた。それでも耐えられたのは、デルポトロ戦で14本のエースを奪われながら勝ちに結びつけた自信だ。決して焦ることなく「ずっと冷静だったし、自信を持って戦っていた」。デルポトロとの戦いが、この日の勝利も引き出した。

 準々決勝で自身年間最多の55勝目を挙げ、この勝利で56勝に伸ばした。それでも今季の優勝は2月のメンフィスオープンだけ。大会前、「優勝を目指したい」と話していた言葉どおり、5年前に世界1位のジョコビッチを初めて倒した相性のいい大会で、今季2勝目に挑む。