平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)王者の羽生結弦(23=ANA)がSPで110・53点をマークし、首位発進した。GPヘルシンキ大会で出した106・69点の世界最高点を更新し、日本人最多のGP10勝目に王手をかけ、5度目の優勝がかかるGPファイナル(12月、カナダ・バンクーバー)出場へ前進した。

最終12番目の滑走で登場すると、冒頭の4回転サルコー、続くトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、4回転-3回転の連続トーループを着氷させた。演技後は手をたたく。笑顔で納得の表情を浮かべた。自らの世界最高点を更新した。

「結果としてはノーミス ホッとしている。どちらかというと、今日は準備段階、6分間練習などで反省点があった。不安が大きかった」と安堵するように言った。

幼い頃に夢見た美しさを求めるプログラムだ。曲は「秋によせて」。幼い頃に憧れた元全米王者のジョニー・ウィアー氏の代表作で、この4月本人に直接頼んで同じ曲で滑る許可をもらった。「彼は自分のなかでずっとヒーロー」。

小学校の頃の羽生が夢中になったのは、その美しい動きだった。音にそうように跳ぶジャンプのタイミング、着氷する際のきれいな姿勢、柔らかな手の表現…。ウィアー氏の影響で細部まで神経の行き届く演技を意識するようになった。終盤のコンビネーションスピンの中に組み込まれた腕を動かしながら回るスピンは「彼にインスパイアされて」やるようになったものだ。

ヒーローは恩人でもある。ファッション、美的感覚に優れたウィアー氏には、14年ソチ五輪のフリー「ロミオとジュリエット」の衣装をデザインしてもらい、その後もことあるごとにエールをもらってきた。1戦ごとに精度を磨き、敬愛を体で表現する。

「(今日は)パーフェクトとはいえない出来。反省点を明日の演技につなげたい」。

GPファイナル出場がかかる17日のフリーでは完璧な演技でフィンランド大会で出した190・43点の世界最高点超えも狙っていく。