<競泳:パンパシフィック選手権>◇第2日◇22日◇オーストラリア・ゴールドコースト

 「ポスト北島」が世界に羽ばたいた。男子100メートル平泳ぎで、身長188センチの小関也朱篤(やすひろ、22=ミキハウス)が59秒62で、国際大会初の金メダルに輝いた。自由形から転向した異色の大型スイマーが、4年前の前回大会の北島康介に続き、金メダルを獲得。日本のお家芸を守った。

 従来の日本人選手とは違う。188センチの小関は前半から飛ばし、50メートルを27秒91の3位で折り返す。後半は効率の良さと、体格を生かしたパワーでぐいぐいと水面を突き進む。ラスト5メートルでシウヴァ(ブラジル)を捉える。自己ベストを0秒1更新する59秒62で逆転優勝。「無我夢中でタッチした。うれしい」。世界に「ポスト北島」の存在をアピールした。

 日本の平泳ぎ選手としては大柄だ。リーチは2メートルもある。中学入学時は152センチだったが「牛乳をよく飲んでいた」と、中学3年時には183センチまで急成長。高校時代に平泳ぎで全国3位になった経験もあるが、基本的には自由形の選手だった。日体大3年の2年前までは、ひたすら自由形を泳ぎ込み、パワーを養った。平泳ぎ転向後は北島の泳ぎを研究。腕のかき、キック、浮き上がりの映像を何度も見て、効率の良い泳ぎを磨いてきた。

 今季は4月の日本選手権100メートルで優勝。6月のジャパン・オープンで100&200メートルの2冠を獲得した。オーストラリア入りを前に、強い決意を固めた。「平泳ぎは、北島さんがつくってくれた歴史がある。日本のお家芸を守り、自分が新たな歴史をつくりたい」。ポスト北島としての使命感と責任感は、最後の逆転につながった。

 今大会で解説者デビューした北島からは「今までの日本人にはいなかった大型スイマーで腕力も強い。よくやってくれた」と評価された。体格のある外国人に技術力で勝ってきた日本平泳ぎの歴史。だが、今は外国人選手も、北島の泳ぎを盗み、技術力を向上させている。体格に恵まれた小関なら、パワーと技術で外国人に対抗できる。明日24日は200メートルに出場。世界で勝ち続けることで、日本の伝統を守っていく。

 ◆小関也朱篤(こせき・やすひろ)1992年(平4)3月14日、山形県鶴岡市生まれ。羽黒高から日体大を経て今春ミキハウス入社。昨年7月のユニバーシアード100メートル平泳ぎで優勝。今年2月の日本短水路選手権では50、100、200メートル平泳ぎで日本新記録を出して3冠。4月の日本選手権は100メートル優勝。6月のジャパン・オープンでは100、200メートルの2冠を達成。188センチ、84キロ。

 ◆お家芸「平泳ぎ」

 日本の競泳はこれまで五輪で20個の金メダルを獲得。個人種目18個のうち11個が平泳ぎだ。最も水の抵抗を受けるため、パワーだけでなく技術の占める要素が強い。体格、体力で劣る日本人は技術力で世界と対抗。36年ベルリン大会では「世界一美しい」泳ぎの葉室鉄夫、56年メルボルン大会では「潜水泳法」古川勝、72年ミュンヘン大会では「田口キック」田口信教。アテネ&北京大会連続2冠の北島康介と、その時代に最先端の「技術革新」で世界の頂点に立ってきた。