横綱朝青龍(27=高砂)が、売却が検討される春場所の会場・大阪府立体育会館存続に立ち上がる。12日、埼玉・草加巡業(草加市スポーツ健康都市記念体育館)で、橋下徹大阪府知事直轄の改革プロジェクトチームの試案に同会場の廃止・売却が盛り込まれたことに反発。反対運動を起こすことを呼びかけた。大好きな大阪の思い入れのある会場だけに、簡単に納得するわけにはいかない。

 橋下知事の体育会館売却案を聞いた朝青龍が、驚きに目を丸くして、まくし立てた。

 朝青龍

 えっ、本当?

 どうなるの?

 壊すの?

 (売却すると聞き)オレが買おうかな…。

 天下の大横綱といえども、個人での体育館買収は夢のような話。それでも、思わず口にしてしまった理由がある。「一番、思い出がある会場なんだ。横綱として初めての場所が大阪だったし、全勝優勝もしたし…」。以前から大阪が大好きだと公言する背景には、毎年積み重ねてきた思い入れがあった。

 ところが、その千秋楽に土俵に上がり、自分に向かって「大阪が元気になりました。ありがとう」と声をかけてくれた橋下知事からの仕打ち。橋下知事は体育会館廃止案以外にも、春場所優勝力士に贈る知事杯副賞の米(240キロ)と牛肉(15キロ)を昨年より一気に半減させた。政治の問題でもあり口を挟むのはよくないと思いながらも不信感は募る。報道陣に「みんなで反対運動しようよ」と呼びかけたほどだ。

 14日に大阪府の担当者が日本相撲協会を訪れ、正式な説明がされる予定。今後は流動的だ。それでも、朝青龍が「日本一、声援が熱くて力になる」と話したファンの声を聞き続けたのは体育会館だ。3月に終わった春場所でも優勝し「まいど!

 おおきに」と大阪弁で感謝の気持ちを伝えたばかり。1953年(昭28)から春場所を行う、最も伝統がある「西の聖地」の存続へ横綱として援護射撃をするつもりだ。【来田岳彦】