横綱朝青龍(27=高砂)が因縁のサッカー場から再起へのスタートを切った。5日、北海道苫小牧で夏巡業がスタート。名古屋場所を左ひじ負傷で途中休場した朝青龍は取組にこそ入らなかったが、土俵入りと約40分間の屋外でのけいこを行った。昨年は夏巡業を休んで、母国モンゴルでサッカーに興じ、2場所出場停止処分を受けるなど大騒動を起こした。思い出の?

 場所でモンゴル巡業(27、28日、ウランバートル)と秋場所(9月14日初日、両国国技館)へ始動した。

 観客の大きな拍手と歓声を受けて体育館内の土俵に近づいた朝青龍が、巡業部の親方衆にあいさつすると、そそくさと花道を下がっていった。その数分後、横綱の姿は、体育館隣のサッカー場にあった。土のグラウンドでの山げいこ(土俵のない屋外の広場などでのけいこ)が目的だった。

 昨夏の大騒動の発端になった豪快なヘディングシュートを思い出させるサッカーゴールの前で、しこ、すり足を開始。その後、来場所の新入幕が濃厚なモンゴルの後輩・玉鷲を「新入幕祝いだ」と右四つで組んだ状態から下手投げ、下手ひねりなどでグラウンドに転がした。痛めている左ひじは黒いサポーターで固め、右手だけ使ってのけいこだったが「力がハンパじゃなかった」と後輩をうならせた。約40分間のけいこで、じっくりと汗をかいた。

 強行日程の来日で疲労の色を見せ、相撲に関してほとんど話さなかった前日とは正反対。けいこ中も笑顔を見せ、子供を呼び寄せて握手するなど、余裕を感じさせた。「サッカーやろうか?

 オレはレフェリーだけどな」とブラックジョークも飛び出した。報道陣から「昨年のイヤな思い出が…」と振られても「そんなことない。すごい思い出だよ。スーパーゴールだったね」と冗談で返した。

 春場所後の春巡業では、左ふくらはぎの負傷を理由に、取組があるにもかかわらず、朝げいこはほとんど不参加。それを考えれば、現時点で可能なけいこを行ったことは前進だ。ただし、大島巡業部長(元大関旭国)は「お客さんも期待しているし、どうせなら土俵でやったほうがいい」とくぎを刺した。取組への復帰も「左ひじはまだビリビリする。真っすぐに曲げるときは力が入るが、横はダメ」と不安は残る。

 夏巡業後には夢だったモンゴル巡業も実現する。朝青龍がマイペースのけいこで秋場所での復活を果たせるのか?

 巡業中の調整ぶりが注目される。【来田岳彦】