日刊スポーツ評論家の中西清起氏(58)が25日、沖縄・宜野座キャンプを視察。阪神藤浪晋太郎投手(26)のワインドアップ投法を高く評価した。開幕投手が有力視されている西勇輝投手(30)がぜんそくの症状で離脱。投手コーチの経験から、3月7日前後を開幕へのデッドラインと見て、21年初陣となる3月26日ヤクルト戦(神宮)に間に合わない場合、開幕投手に藤浪を推した。【取材・構成=田口真一郎】

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先発陣の柱である西勇がチームを離れた。ぜんそくの症状による帰阪ということが理由であれば、外傷ではないので、首脳陣はそれほど深刻には考えていないと思う。

ただし、調整が遅れた場合は楽観視できない。投手コーチの経験から考えると、3月7日前後に登板できなければ、開幕投手を託すのは厳しくなる。3・26から逆算すると、やはりオープン戦で3度投げたいところだ。2試合では、ある程度、長いイニングを投げられない。実戦を投げた後の軽い負傷ならば、問題ないが、今季はまだ登板していない。投手というものは、打者に投げる機会がないと、不安になるものだ。調整が遅れた場合は、肩を作り直す必要性も生じる。1年を戦う上でも、無理をさせるわけにもいかないだろう。

エース不在で開幕を迎える非常事態になった場合、誰を3・26に先発させるべきか。数字の上では、昨年11勝を挙げた秋山だ。しかし私は藤浪がおもしろいと思う。開幕投手は「アリ」だ。

ブルペンで藤浪の投球をチェックしたが、内容は良かった。ワインドアップに取り組んでいるのは、大きく見せて勢いよく投げたいという狙いがあるのだろうが、その半面、体が後ろに振られるので、軸がブレる危険性もはらむ。その点が心配だったが、問題はなさそうだ。テークバックがコンパクトになり、トップの位置が早く作れていた。打者もそうだが、トップの位置を早く作らなければ、打ちにいく動作ができない。

あれだけ身長のある投手は手足が長いために、たたむという動作がしづらくなる。今までは腕が体から遠ざかる傾向にあったが、この日はうまくたためていた。トップの位置が早く作れることで、体のブレもなく、制球面で荒れるというのは少なくなる、と思う。また右足に体重が乗り、力がうまくためられている。藤浪自身もワインドアップに手応えがあるのだろう。フォームの安定は精神的なゆとりにつながる。

もちろん、一足飛びに開幕というわけにはいかないだろう。ここまでの実戦登板の内容は確かにいい。今後のオープン戦の登板で、「重圧はかかるが、中心でやってくれ」と責任をもたせるのか、「もう少し楽なところで」となるのかをジャッジする必要はある。昨年は開幕ダッシュに失敗した。今年、チームは若返っただけに、スタートダッシュは今まで以上に重要だ。勢いに乗れば、若い力がプラスになる。スタートでコケれば、逆境でチームをまとめられるベテランの不在がマイナスに響いてくる。西勇が開幕に間に合えば、問題ないが、非常事態の際、チームに勢いを与えるのは、藤浪だろう。(日刊スポーツ評論家)

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▼西勇が3月7日のソフトバンク戦(ペイペイドーム)で復帰すると仮定すれば、中5日で13日の西武戦(甲子園)、さらに中5日で19日のオリックス戦(京セラドーム大阪)が候補になりそう。短いイニングも含めた3度のオープン戦登板を経て、中6日で26日の開幕ヤクルト戦(神宮)に向かうプランが考えられる。3月5日のソフトバンク戦で復帰できれば、3試合とも中6日登板で開幕に向かえる。

◆藤浪の今春キャンプ ワインドアップ投法に挑戦中。2日ブルペンでは足を上げた際に1度三塁側に視線を移す新スタイルを披露した。21年初実戦となった7日紅白戦はドラフト1位佐藤輝から空振り三振を奪うなど、2回を無四球で3奪三振1安打無失点。21日広島戦で対外試合初戦に臨み、3回を3奪三振2安打1四球で無失点と快投した。2戦とも最速156キロを計測し、150キロに迫る高速フォークも健在だ。