85年阪神日本一の守護神で、元投手コーチの中西清起氏(59=日刊スポーツ評論家)が試合をチェック。阪神が1点リードで迎えた4回2死二、三塁の攻撃で、打順が回った先発秋山拓巳投手(30)に代打を送った采配に疑問符をつけた。【聞き手=松井清員】

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秋山を3回で代えたことに、大きな疑問が残った。4回の攻撃がチャンスだったとはいえ、代打を送って勝負をかけるには早すぎる。ましてや1点リードしていて、阪神では青柳、ガンケルと並んで一番安定しているローテ投手だ。3回の2失点も四球連発とか、どうしようもない取られ方ではなかった。しかも広島戦は昨年から無傷7勝の好相性。広島は秋山を代えてくれて心底、ラッキーと感じたはずだ。いくら5日に試合がないといっても、6日からは9連戦。中継ぎ陣が疲弊している状況で、残りの6イニングを1回ずつつなぐことにも無理がある。

秋山も手袋をはめて打席に立つ準備をしていたし、ベンチで福原コーチに声をかけられると難しい顔をしていた。交代は納得できていないと思うし、やっていられない、となりかねない。次回以降も同じように代えられるかもしれない不安がよぎるだろうし、ベンチとの信頼関係、今後の登板への影響が心配になる。2番手以降の人選についても、斎藤や石井大ではなく、持て余している藤浪のロング救援など、パワーピッチで流れを呼べる投手の投入がベストではなかったか。

2位巨人に最大8ゲーム差をつけながら、わずか半月で猛烈に追い上げられた首脳陣の焦りと見られても仕方ない。秋山の交代以外でも、特にこの1週間はチグハグな采配が目立った。北條や坂本らがいるのに、打力を買って昇格させた小野寺にバントさせたり、サンズ、佐藤輝の中軸と遊撃固定の中野の3人を同時に外して打線に迫力をなくさせたり。ベンチが迷走して、焦りをそのまま選手に伝えてしまっている。選手も不安や不信を感じながら戦わざるを得ない悪循環だ。

前半は残り9試合。攻撃陣が低調だ、7回の男が決まらないなどと言っても、短期間で爆発的な改善は難しい。一番大事なのは、ベンチがどっしり構えて戦うことだ。藤川や能見、鳥谷らが抜け、前回05年の優勝を知る現役はいなくなった。若いチームは勢いのある時はいいけど、状態が悪くなると経験がない分、立て直すことが難しい。そんな時こそ首脳陣がどっしり導かないと。貯金はまだ16もある。シーズンもまだ半分ある。戦力もある。五輪ブレークの1カ月を使って悪い状態を立て直せるのだとプラスに考えて、後半勝負に出るイメージで十分だ。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 4回、代打が送られ3回2失点で降板となる秋山(撮影・清水貴仁)
広島対阪神 4回、代打が送られ3回2失点で降板となる秋山(撮影・清水貴仁)