上位浮上を目指すなら、正捕手問題を解消せよ! 日刊スポーツ評論家の権藤博氏(82)が、前半戦を借金「10」の4位で折り返した古巣中日に後半戦の戦い方を提言。将来も見据えて木下拓哉捕手(29)にすべてを託し、守り勝つ野球に徹する覚悟の重要性を唱えた。

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中日は優勝を目標に掲げてスタートしましたが、首位阪神に12・5ゲーム差の4位。投手陣はチーム防御率リーグ1位が示す通り踏ん張りましたが、攻撃力不足が勝敗に大きく影響したことは確かでしょう。

ただ、これといった補強もなく、ビシエド頼みの打線が継続する以上、劇的な変化は望めません。後半戦で上位浮上を目指すのであれば、「正捕手・木下拓」の存在感をいかに高められるかにあると考えます。

長年の課題だった正捕手問題にようやく終止符を打つべく、昨年、芽を出したのが木下拓です。88試合に出場。経験を積み、投手との信頼関係を築き、盗塁阻止率もリーグトップ。打撃面でも殻を破りました。今季はフル出場に近い形で一流への道を歩み始めるのでは、と楽しみにしていました。でも4月21日のDeNA戦を皮切りにポツポツとスタメンを外れるケースが出始め、代打や守備固めでの出場もなかった試合は8試合を数えました。

本人の体調なのか、投手との相性問題なのか、それとも首脳陣の方針なのか。いずれにせよ、せっかく芽が出た常勝チームに欠かせない正捕手という名の「大黒柱」の育成が滞っていては将来展望という面でもマイナスでしかありません。

私が見る限り、現在のセ・リーグで正捕手と呼べる雰囲気を持っているのは、阪神梅野と中日木下拓だけです。少々の体調不安なら試合に出続けなければいけないし、弱い攻撃面をカバーする面でも、木下拓の打撃力は魅力があります。打率2割7分1厘7本塁打という立派な数字を残していながら、規定打席に到達していないのは、起用する側の問題でしょう。

安定的な強さを発揮し続けるためには、正捕手の存在は欠かせません。首位で折り返した阪神はその条件を満たしているわけです。中日もそのカードを保持していながら、みすみす手放しているようでは、浮上など望むべくもありません。3位を狙うと言っても、上位3チームは2・5ゲーム差で競り合っています。3位浮上は優勝争いと同義語ですから、容易な道ではありませんが、3位を目標に戦うのであれば守り勝つ野球に徹するしか道はありません。そのためには正捕手問題を完全解決し、チームカラーを鮮明にするしかないでしょう。(日刊スポーツ評論家)

本塁打を放つ中日木下拓哉(2021年5月27日撮影)
本塁打を放つ中日木下拓哉(2021年5月27日撮影)