日刊スポーツ客員評論家で、85年阪神日本一監督の吉田義男氏(フランス野球ソフトボールクリケット連盟名誉委員)が、88歳の米寿を迎えた26日、16年ぶりのリーグ優勝と、36年ぶりの日本一を熱望した。前回の東京五輪で優勝した1964年(昭39)の主力だったレジェンドは、当時をだぶらせながら、矢野監督の采配がカギを握るとした。【取材、構成=寺尾博和編集委員】

東京五輪の柔道、水泳のメダルラッシュはテレビで観戦しました。新競技のスケボーも興味津々でしたが、“牛若丸”もビックリの身体能力ですわ(笑い)。サッカーも期待大で、五輪において野球との統合競技になっているソフトボールの戦いぶりも素晴らしい。

特にソフトボールはベース間の距離が短いので、内野手の動きに無駄がない。旧知の宇津木妙子さん(元日本代表監督)の厳しい教えは、代表チームの伝統になっていると思って見ています。米国との決勝は技術より魂の勝負になるでしょう。

前回1964年の東京五輪は、全日本女子バレーの“東洋の魔女”の金メダルが象徴でした。“鬼の大松”こと、大松博文監督の「回転レシーブ」は有名で、わたしたちも「下から上へ」という打球処理を学んだものです。

その年、阪神は2年ぶり2度目のリーグ優勝を果たしました。前半戦終了時点で三原監督率いる大洋に6・5ゲーム差をつけられましたが、土壇場で奇跡の逆転優勝でした。同じ東京五輪イヤーの今年は、阪神にとって、巡り合わせも感じさせる大チャンスです。

後半戦はいかに「リリーフの整備」をして臨めるかでしょう。それと、ずっと懸案のショートです。中野で押し通すことができるかどうか。そして最後まで選手を信頼して使い切れるか。ここからは、矢野監督の手腕にかかってきます。

前回の東京五輪の年は、初のナイター開催だった日本シリーズで南海ホークスに敗れました。午後1時半からの五輪の開会式が熱狂し、日本シリーズ最終戦と重なった甲子園のナイターは、観客が1万5172人という寂しさでした。今年はぜひとも、オリックスと“関西シリーズ”再演で盛り上げてほしいものです。