開幕前のオリックスに対する私のイメージは「いるっちゃいるけど、いないっちゃいない」だった。レギュラークラスの選手はいるにはいるが、チームを支える根幹をなす選手が打線では吉田正、投手陣では山本以外見当たらないという思いを言葉に込めた。

夏場以降、激しい優勝争いを演じてきたのだから、選手がめきめき力をつけたのは当然のことだ。「いるっちゃいる」と表現した中で、打線では福田、宗の1、2番が固定できたことが大きかった。付け加えるなら、宗は守備も自信をつけたように感じる。宗は守りでいいプレーをすると、その後の打席でヒットを打つ印象が強い。守備と打撃が好循環のいい関係になっており、これはチームにとってもひとつの起爆剤になったと感じた。

そして、吉田正に頼り切っていた打線で、吉田正の後に杉本が定着したことで、今季のオリックス打線の破壊力が生まれた。私も杉本が30本以上打つとは想像できなかったが、吉田正の後に大砲をすえることに成功した。

吉田正は死球で戦列を離れたが、新しいオリックス打線の理想型が見えてきたことで、吉田正の不在も致命傷にならなかった。ダメージを最小限に食い止め、打線は機能している。1、2番コンビ、杉本の成長がそれを支えている。

そして、投手陣に目をやると、宮城の成長が目覚ましかった。山本の力は誰しもが認めるところ。突出した安定感と実力から、オリックス投手陣の中では抜きんでていた。打線の吉田正がそうであるように、オリックスの投手陣は山本頼みのイメージが強かった。

そこに、宮城が急成長した。内容、成績ともに高卒2年目とは思えないピッチングを続け、山本、それに続く宮城に引っ張られるように、山崎福、田嶋と計算できる先発陣がそろっていった。抑え平野の年齢を考えると、今後のリリーフ陣には多少の不安材料はあるが、強力な先発スタッフは他球団から見れば脅威に映るだろう。

中嶋監督がショートで紅林を我慢強く使ったことも、チーム力の底上げとして効果的だったと感じる。昨年はシーズン途中に2軍監督から監督代行として昇格し、そこから育てながら勝つという難しいチーム作りに取り組んできたが、見事に結実した優勝となった。(日刊スポーツ評論家)