「SMBC日本シリーズ2021」はほっともっと神戸に舞台を移して第6戦を開催。ヤクルトが延長戦を制し、20年ぶりの日本一となった。惜しくも敗退したオリックスだが、エース山本由伸投手(23)が第1戦に続く先発でヤクルト打線を9回1失点に抑え、11奪三振と力投した。日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏が、山本のピッチングを解説した。

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やはり山本は日本一の投手だ。中盤にこれでもかと味方のミスに襲われた。攻撃では4回無死一塁、フルカウントからT-岡田が甘めの直球に手を出さずに、二盗も刺されて、三振ゲッツー。守備でも5回2死二塁の浅い左前打は左翼手吉田正の肩でなければ先制適時打にならなかった可能性が高い。さらに6回は三ゴロ、遊ゴロと連続失策。並の投手なら3~4点は失う流れだ。

この苦境をしのげる投手は限られている。しのげてもピンチ脱出に球数を要し、7回ぐらいで降板に追い込まれたかもしれない。だが、たった6球で二ゴロ併殺、遊ゴロと3つのアウトを奪ってみせた。

立ち上がりから初戦とは違った。前回はさすがの山本でも緊張感があったはずだ。1巡目はカーブ、フォーク主体だったが、直球で押しまくった。9番西浦までの5奪三振はすべて直球。打者はこれだけ直球で押されれば、2巡目でフォークの比率が高まることを予想できても、直球が残像として残ってしまう。4回1死三塁で絶対的に三振が欲しい場面でサンタナ、中村からフォークで連続三振。2人を抑えた1打席目の直球による三振が確実に効いていた。

3巡目になると、あまり使っていなかったスライダーが勝負球に一変した。8回のクリーンアップはスライダー、カーブ、スライダーを決め球に3者連続三振。イニング終了時には、ベンチで高山投手コーチから握手され、交代の流れだったが、中嶋監督もすぐに足を運び、9回続投へと翻意させるほど余力を感じさせる内容だった。

体格差などタイプは違うが、全球種が勝負球となる点ではダルビッシュと重なる。直球、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシームと同じ強い腕の振りから繰り出される。味方のミスをカバーした点を含め、勝てる投手と勝てない投手の差がはっきりと表れていた。今シリーズでは勝ち星はつかなかったが、さすが18勝5敗、防御率1・39の剛腕だ。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対ヤクルト 2回表ヤクルト無死、見逃し三振に終わる村上。投手山本(撮影・加藤哉)
オリックス対ヤクルト 2回表ヤクルト無死、見逃し三振に終わる村上。投手山本(撮影・加藤哉)
オリックス対ヤクルト 4回表ヤクルト2死三塁、中村を空振り三振に打ち取りほえる山本(撮影・前岡正明)
オリックス対ヤクルト 4回表ヤクルト2死三塁、中村を空振り三振に打ち取りほえる山本(撮影・前岡正明)
オリックス対ヤクルト 9回、笑顔でベンチに戻る山本(撮影・前岡正明)
オリックス対ヤクルト 9回、笑顔でベンチに戻る山本(撮影・前岡正明)