5回まで2点をリードしていた巨人だが「このまますんなり勝てそうだ」と思った人は誰もいなかっただろう。これが首位を独走するヤクルトの圧力なのだが、それだけが理由ではない。巨人が逃げ切るイメージが膨らまないのは、それなりの理由がある。

1番の要因はリリーフ陣の不安だが、勝ちに行くためのチームバランスが悪い。今試合では5回に坂本が途中交代でベンチに退き、チームバランスの悪さが露呈してしまった。

坂本の代打には湯浅で、決して打力が売りの選手ではない。そして6回裏1死一塁には先発のメルセデスに代打・増田陸が送られた。

増田陸は今季から頭角を現した若手で、スイングそのものは見どころがある。しかしヤクルトの投手は大西だった。大西はシュートを武器にする右腕で、特に併殺の可能性がある状況で右打者は厄介なピッチャー。2点をリードしている状況で試合の流れが変わる併殺は、もっとも避けたいところだった。

結果は低めのフォークを打って遊ゴロ併殺打。増田陸を責めるつもりはないが、想像していた「嫌な流れ」が始まってしまった。

8回に2点を奪われて同点に追い付かれた。延長戦に突入したが、ここまでの選手起用もメリハリをつけられなかった。代走や守備固めをしたい場面でも、適材適所の起用法ができなかった。

今試合に限っていえば、選手の駒不足に陥ったのは坂本が途中交代だろうが、もともとコンディションに不安のある状況で、常に想定していなければいけないし、言い訳にはならないだろう。

ベンチ入りのメンバーを見て1番不自然なのは、一塁を守る中田、中島、増田陸が3人もいて、すべて右打者なこと。中田と中島には代走が必要だし、それでなくてもスタメンに起用している外野手のウォーカーとポランコには守備固めが必要。やりくりに余裕はないはず。

リリーフ投手の力不足や、控え選手の打力不足は急激に向上するものではない。しかし、代走や守備固めの選手なら代わりになる選手はいるだろう。

試合は延長10回裏2死一、二塁から吉川がサヨナラヒットでヤクルトの14カード連続勝ち越しをストップさせた。打った吉川はもちろんだが、先頭打者で四球を選んだ八百板の粘りは見事だった。今の巨人はチームバランスを考えてベンチ入り選手を配置すれば、若手の出場チャンスは増える。チャンスを生かした若手が、チームに勢いをもたらせると思う。(日刊スポーツ評論家)