エンゼルス大谷が、ついに10勝目を挙げた。ベーブ・ルースと比較され続けていたのは精神的に大変だったと思う。これで記録のことを言われなくなるので、ひとまずホッとするはずだ。次回以降は、より投球に集中できるだろう。

この試合は、スライダーの制球があまり良くなかった。カットボールで補うような形となったので、珍しく3四球を与えても、何とか6回まで投げられた。スライダー40%、カットボール14%で合計54%あったが、スライダー系は肘に負担がかかる。前の試合では右前腕の違和感で途中交代しており、肘の手術も経験している。こうした変化球中心の配球では、三振を多く取るのは難しい。

直球は今季19試合目で最も少ない16%しかなかった。1回と4回にヒットを打たれて、狙われていると感じたのかもしれない。だが、99マイル(約159キロ)が出ていたし、小さい打者にはもう少し力で押してほしい。スプリットも落ち方はよかったが、腕の振りは直球と同じ角度。直球で押せる要素はあった。物足りなさを感じた。

こんな注文をするのも、大谷だからこそだ。普通の選手なら勝つだけで十分。だが、大谷は投手としても打者としても両方パワーで対抗できる初めての日本人だ。私は直球とフォークだけだったが、あくまでコントロールで勝負するタイプだった。今後は直球と変化球の割合を逆転させて、世界中から米国に集まる筋骨隆々の打者を力でねじ伏せてほしい。肘の負担も減るし、大谷ならできる。(日刊スポーツ評論家)

アスレチックス対エンゼルス 試合後、大谷の記録を喜ぶファン(撮影・狩俣裕三)
アスレチックス対エンゼルス 試合後、大谷の記録を喜ぶファン(撮影・狩俣裕三)