勝ちゲームの中に、下位に低迷するチーム特有のスキが見えた。端的に表現して、勝利が見えてきたところで漂う安心感を、周囲に察知されてはダメだ。この試合はそこに尽きる。

試合展開は巨人が初回先制、5回に中押し、そして7回は丸のダメ押し2ランと、理想的な流れだった。先発菅野もほぼ万全の投球内容。しかし、私は打ってベンチで気勢を上げる姿に、勝利を確信しているような、安心してしまっている選手の空気を見た。

まだ試合は終わっていない。そして4位にいるチームでいいはずがない。連敗を止めたい、何とか盛り上げて勝ちたいという気持ちは分かる。だが、そこはグッとこらえ、「俺たちはこんなもんじゃないんだ」という気構えを貫くことが大切だと思う。

今日のように打つべき人が打点を挙げ、先発がきっちり試合をつくり、勝つべくして勝つ。それを続けていくことで、はじめて少しずつチームは盛り上がり、それが他球団の脅威となる勢いに膨らんでいく。

最終回に控えの増田大が失策して、最後は満塁のピンチにまでなった。わずかなスキも与えない試合の終わり方をしてはじめて、3連戦初戦を取ったアドバンテージが生まれる。これでは、明日の試合に向け、中日に反撃の糸口を与えてしまったと言われてもやむを得ない。勝負事は、厳しく勝ちきることで、その後も勝ちを呼び込んでいけるようになる。

坂本はまだ凡打の中身が良くない。フライを打ち上げる内容も、本人はしっくりきていないはずだ。7番は中軸に比べれば楽な打順だが、どこかのタイミングで原監督が決断し、2番など上位に置くことも大切かもしれない。そうした首脳陣の決断が、坂本復調には追い風になると感じる。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 8回無失点で勝利投手の巨人菅野(右)はクロール(左手前)らナインを迎える。左は原監督(撮影・鈴木みどり)
巨人対中日 8回無失点で勝利投手の巨人菅野(右)はクロール(左手前)らナインを迎える。左は原監督(撮影・鈴木みどり)