巨人OBからすれば、Bクラスで苦しむ巨人をどこかのタイミングでしっかり評論しようと思っていた。
CS争いで厳しい状況の中、3位DeNAとの直接対決初戦で、絵に描いたような展開で快勝した。必死に戦うチームに対し、こう言っては失礼になるが、軸になる選手が自分の働きをすれば、こうした力を出せるのだと感じた。
投打がかみ合うと、4位にあえぐ巨人も、こういう試合ができると証明したと言える。戸郷が躍動感を全身で表現しながら投げる姿は、野手の立場からすれば、最高の刺激になる。
投げ終わった後、跳び上がる様は、見ていて気持ちが良く、それはそのまま野手に好影響を与える。4回1死一、三塁。ブリンソンが今永から犠飛を放つ。これに岡本和がよく走り、最後は懸命に上半身でタッチをかわしながら滑り込んだ。
大きなプレーだった。岡本和の懸命さも伝わってきたし、ブリンソンがしっかり犠飛を放ったことも、打線のつながりを感じさせてくれた。
今永から先制点を奪い、これで先手を取って逃げる形が見えてきた。巨人は先制して追加点を奪い、逃げていく野球をする時が1番強い。打ち合いを制する展開よりも、主導権を渡さない試合運びこそが、巨人が強さを発揮する。
先制点を奪い、戸郷の躍動感は増し、次の焦点は追加点という流れで、勇人(坂本)が2ラン。第1打席の雰囲気からして、充実ぶりがうかがえた。自信に満ちた表情と、力強いスイングには予感が漂っていた。
3点リードして、9回に勇人の3ランでとどめを刺し、戸郷は完封で12勝目。これ以上ない勝ち方だった。この勝利を生かすには2戦目が大切。戸郷を見て、後に続く先発も一層奮起してほしい。
名前を出して申し訳ないが、前日の菅野は投げていて気持ちが引いているように見えた。やはりピッチャーは打者をのんでかかるくらいの勢い、力感が大切だと痛感する。
巨人は残り6試合。目の前の1試合を必勝で取っていくことで、先につながる。この日の試合を見る限り、むしろDeNAに硬さが感じられた。裏を返せば巨人に相手を上回る圧力があるということだ。(日刊スポーツ評論家)