巨人は2位を死守するしかない。その中で広島に逆転勝ちを収めたが、この勝ち星は岸田なくしては語れない、そう思わせる働きだった。同点の8回無死一、二塁。岸田は2球で追い込まれる。ここでその心中がはっきりうかがえるバッティングを見せた。
何とか右打ちで走者を進めたい。その一心から右方向を意識したスイング。ボテボテになりながらも投ゴロで1死二、三塁と後ろにつなげた。
結果として坂本の勝ち越し犠飛が出るのだが、私はこのバッティングに4回の同点2ラン以上の価値を見る。5番打者というよりも、5番目のバッターという強い使命感がうかがえる。だから、状況判断を常に見誤らない。ここに懐の深さを感じる。
その姿勢は捕手としても随所に光った。同点の6回2死三塁。佐々木に対して、アグレッシブに内角を攻める。そこには詰まらせて打ち取ったらオッケー、四球でも構わない、ただし簡単にストライクは取りに行かない、その軸は最後までぶれなかった。
結果、佐々木は歩かせるのだが、続く会沢にもカウント2-1までは、佐々木の時と同じようにアグレッシブに内角を攻めつつ、決して安易にストライクを取りに行かない。最後は力勝負で腹をくくり、フライアウトに仕留めた。
終盤7回もシュートに最大の特長がある田中瑛を巧みにリードした。中村奨、ファビアンの2打者に対し計7球を投げ、使ったシュートは1球のみ。スライダーを外角に集め、1発だけは避けたい場面で、確実に2者連続空振り三振を奪い、攻撃の糸口を作らせなかった。岸田らしい繊細さと大胆さを見た。
今季の巨人は、開幕から甲斐がスタメン捕手を不動のものとしていたが、7月以降は岸田が出場を増やし、今やスタメン出場では甲斐の64試合(勝率4割9分2厘)に対し、岸田は56試合(同5割5分6厘)と勝負強さを発揮している。
昨年、巨人は岸田、大城卓、小林の3人捕手体制で優勝を果たしている。それが今年は甲斐の加入によって、その序列は変わっていた。その出番が少ない時にも、いかに備えているか。そこに真価が問われるのも捕手の特質と言える。
捕手に求められるのは、打つか、勝つか、この2大要素に集約できると私は考えるが、岸田の常に冷静さを失わない仕事ぶりは、今のチームには不可欠と言える。(日刊スポーツ評論家)




